pharmacist's record

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アジスロマイシン早期投与で下気道疾患の重症化を予防できる?

Early Administration of Azithromycin and Prevention of Severe Lower Respiratory Tract Illnesses in Preschool Children With a History of Such Illnes... - PubMed - NCBI
JAMA. 2015 Nov 17;314(19):2034-44

多くの幼児において重篤な下気道疾患(LRTI:Lower Respiratory Tract Illness)の再発をきたす。ウイルス感染、ときに細菌感染もみられ、重篤なLRTIを防ぐ治療が必要とされる

アジスロマイシン(AZM)の早期投与(重篤なLRTIの症状の発症の前)によりLRTIの重症化を防げるかを検討したランダム化二重盲検並行群間比較試験(parallel-group trial)
P:重篤なLRTIの再発歴のある1歳~5歳の幼児604名
E:AZM12mg/kg/day 5日間(max dose 500mg/day) n=307
C:プラセボ n=300
O:重篤なLRTIに進行しなかったRTIの発症数(重篤なLRTI:経口ステロイドの処方を必要とするLRTI)

RTI発症率が低いため試験期間延長 52週→78週

資金提供:NHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)という公的機関
製品提供などのサポート:GSK、メルク、テバ、ベーリンガー、サノビオン

<患者除外基準>
・現行の喘息治療中
・ICSを含む喘息治療を過去1年に8ヵ月以上累積投与
・胃食道逆流(GER)
・過去1年に喘鳴をきたす疾患で1回以上の入院
など。
詳細はSupplemental Content参照


以下のいずれかの症状により、RTI→重篤なLRTIへと進行とみなす 
①アルブテロール3回投与後、軽度(mild)以上の症状が1時間以上持続
②4時間に1回よりも頻回にアルブテロールの投与が必要
③試験薬開始から24時間にわたり、アルブテロールの治療を6回以上投与
④試験薬開始から5日間以上、中等度から重度の咳や喘鳴がある

試験薬開始から14日以内に重症化がなければ、重篤なLRTIへの進行はなかったとみなす。


RTI発症にて重篤なLRTIを発症したらそこで試験終了
重篤なLRTIを発症しなければ、フォロー継続
RTI4回で試験終了
(Fig1より)

<結果>

AZM群(n=307) プラセボ群(n=300)
治療した人数(評価対象人数) 223名 220名
評価対象外(試験中断やフォロー期間中RTI発症なし) 84名 80名
治療回数 473回 464回
重篤なLRTI 35名 57名

AZM早期投与により重篤なLRTIへの進行のリスクが減少
ハザード比HR0.64(95%CI 0.41-0.98)

1回目のRTIの重篤なLRTI発症リスク
絶対リスク:AZM0.05 プラセボ0.08
リスク差:0.03(95%CI 0.00-0.06)
NNT:33

LRTIの累積リスク

treated RTI 1回目 2回目 3回目 4回目
AZM vs プラセボ(重篤なLRTI/treated RTI) 16/223 vs 22/220 13/146 vs 19/147 5/78 vs 9/74 1/26 vs 7/23
NNT 33 14 10 7

<鼻腔サンプル中のウイルスの検出>
約45%ウイルスが検出(AZM群、プラセボ群でほぼ同等)
検出されたうちの6~7割がライノウイルス。他、エンテロウイルスアデノウイルスコロナウイルス、パラインフルエンザウイルスなど

<有害事象
試験中断にいたるような有害事象はみられず。
消化器症状:AZM3件、プラセボ1件


LRTIリスクが高い幼児の場合、AZMの早期投与は有効かもしれないという結果です。
しばしば風邪をこじらせて喘鳴を伴うような咳が出てしまう子供の親の立場になって考えてみると、やはり抗生剤が欲しい!と思うかもしれませんね(もちろんこの研究結果だけで判断できませんが)。
ただ、そうは言っても耐性菌の懸念もあり、抗生剤の投与可否はとても難しい問題だと思います。