風の噂で聞いたのですが、まったく同じレジメンでピロリ菌二次除菌を行うケースがあると…(照会しても変更なし)。
本当でしょうか…。
そもそも再度同じ薬で除菌しようとしても失敗に終わりそうな気がするのですが…。
同じレジメンでの再除菌について記載されている文献はないかと、いろんな単語で検索してみました。
Second-line rescue therapy of helicobacter pylori infection. - PubMed - NCBI
Therap Adv Gastroenterol. 2009 Nov;2(6):331-56.
“Is it necessary to perform culture after failure of the first eradication treatment?”の項目に、
“Thus, the choice of a second-line treatment depends on which treatment was used initially, as it would appear that retreatment with the same regimen cannot be recommended”と記載あり
同じレジメンでの再治療は推奨されないといったことが書かれています。
アブストラクトを読んでみると、
再治療の選択は、初回のレジメンに依存する。初回がCAMベースであれば、二次除菌はMNZベース、三次除菌はLVFXベースを、とあるように、抗生剤は変更して再治療をするよう記載されています。
やはりまったく同じレジメンで再治療というのは一般的ではないように思います。
ちなみにメーカーさんも同じレジメンでの再治療は推奨していないようです。
ピロリ除菌については以前もとりあげました。
最も有効なピロリ除菌療法は? 整腸剤は併用したほうがよい? - pharmacist's record
国内では一般的ではないですが、LVFXベースのレジメンもあるようですね。
国内ではキノロンベースの保険適応はないですが、臨床試験が行われていたようですのでご紹介。
Multi-center randomized controlled study to establish the standard third-line regimen for Helicobacter pylori eradication in Japan. - PubMed - NCBI
J Gastroenterol. 2013 Oct;48(10):1128-35.
背景:日本におけるピロリ菌の三次治療レジメンの確立を目的として研究を実施
P:一次治療と二次治療に失敗したピロリ菌感染者204名
E/C
①LA群:ランソプラゾール(LPZ)120mg/日(分4)、AMPC2000mg/日(分4)2週間
②LAL群:LPZ60mg/日(分2)、AMPC1500mg/日(分2)、LVFX600mg/日(分2)1週間
③LAS群:LPZ60mg/日(分2)、AMPC1500mg/日(分2)、シタフロキサシン(STFX)200mg/日(分2)1週間
O:抄録に記載なし
盲検化:抄録に記載なし
ランダム化:記載あり
ITT解析:記載あり
<結果>
除菌率 | |
---|---|
LA群 | 54.3% |
LAL群 | 43.1% |
LAS群 | 70.0% |
STFXベースが最も除菌率が高率。
一次除菌、二次除菌に失敗したにも関わらず、PPIとAMPC高用量2週間で半数が除菌に成功しているのが印象に残りました。
AMPC、CAM、MNZ,、LVFX、STFXの感受性を検査
抗生剤 | 耐性率 |
---|---|
AMPC | 8.2% |
CAM | 86.4% |
MNZ | 71.3% |
LVFX | 57% |
STFX | 7.7% |
このデータは一次除菌、二次除菌を失敗した人を対象とした耐性率だと思いますので、CAM、MNZは耐性率が高いですね。
国内におけるLVFXの使用量はすさまじいものがありますので、やはり耐性率も高かったようです。
LVFXとSTFXの耐性率の大きな差は、その使用量にあるのではないかと思いました(勝手な推測ですが…)
この結果をうけて、ピロリ菌の三次除菌としてSTFXが推奨されると言い切れるかどうかは正直わかりませんが、一次除菌も二次除菌も失敗するケースが残念ながらありますので、保険適用範囲内での三次治療の確立が望まれます。