MANGA Study
Meta-Analysis of New Generation Antidepressants Study
Comparative efficacy and acceptability of 12 new-generation antidepressants: a multiple-treatments meta-analysis. - PubMed - NCBI
Lancet. 2009 Feb 28;373(9665):746-58.
背景:従来のメタアナリシスは第二世代の抗うつ薬の有効性において矛盾した結果が示されている。12種類の第二世代の抗うつ薬の効果を評価するためにメタアナリシスを実施
<方法>
1991~2007のRCT117試験(n=25928)を系統的にレビュー
P:単極性大うつ病の成人
E/C:12種類の第二世代抗うつ薬
O:応答率、試験中断
ITT解析されている
試験期間8週間
<結果>
有効性
vsデュロキセチン | vsフルオキセチン | vsフルボキサミン | vsパロキセチン | |
ミルタザピン | OR1.39 | OR1.37 | OR1.41 | OR1.35 |
エスシタロプラム | OR1.33 | OR1.32 | OR1.35 | OR1.3 |
ベンラファキシン | OR1.3 | OR1.28 | OR1.3 | OR1.27 |
セルトラリン | OR1.27 | OR1.25 | OR1.27 | OR1.22 |
ミルタザピン、エスシタロプラム、ベンラファキシン、セルトラリンが有効性に優れ、
エスシタロプラム、セルトラリンが忍容性に優れている(試験中断が少ない)。
エスシタロプラムとセルトラリンがbest profile of acceptabilityという結果。
※日本の用量と同等ではないので結果の解釈に注意
日本 | 海外(米国) | |
エスシタロプラム | 10~20mg | 10~30mg |
パロキセチンCR | 12.5~50mg | 12.5~62.5mg |
セルトラリン | 25~100mg | 50mg~200mg |
デュロキセチン | 20~60mg | 40~60mg |
ミルタザピン | 15mg~45mg | 15mg~45mg |
トラゾドン | 75~200mg(さらに適宜増減?) | 50~400mg |
ベンラファキシンXR※ | 37.5~225mg(37.5は初期量) | 75~450mg |
※ベンラファキシンは2015冬ごろに発売予定
国内の用量は2015.11時点
海外の用量は、Am Fam Physician. 2006 Aug 1;74(3):449-456.を参照
アブストラクトしか読めませんが、このような結果。
同系統薬のランク付けという賛否両論を生みそうな研究ですが面白いですね。
エスシタロプラムとセルトラリン推しの結果ですが、国内だと適応用量がやや少ないので、その点は差し引いて考えた方がいいかもしれません。
ちなみに、職場で使用量が多いのはセルトラリンです。
各薬剤の特徴を把握しておくことも大事だと思います。
Implementing AHRQ Effective Health Care Reviews: Second-Generation Antidepressants for Depression in Adults - American Family Physician
Am Fam Physician. 2013 Nov 15;88(10):687-689.
Clinical Bottom Lineより抜粋
<大うつ病性障害MDD>
効果発現までの期間 | ミルタザピン(1~2週間)が早い(シタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリンと比べて) |
治療4週間後の応答率 | ミルタザピン、シタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリンは同等 |
<有害事象の比較>
吐き気・嘔吐 | ベンラファキシン>SSRI(発生率がSSRIと比較して52%が高い) |
体重増加 | ミルタザピン>シタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン |
下痢 | セルトラリン>ブプロピオン、シタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、ミルタザピン、パロキセチン、ベンラファキシン(発生率が8%高い) |
眠気 | トラゾドン>ブプロピオン、フルオキセチン、ミルタザピン、パロキセチン、ベンラファキシン(発生率が16%高い) |
薬の中断率 | デュロキセチン>SSRIs(67%リスク高)、ベンラファキシン>SSRIs(40%リスク高) |
離脱症状(頭痛、めまい、ふらつき、吐き気、不安) | パロキセチン、ベンラファキシンで多く、フルオキセチンで少ない |
性機能障害 | パロキセチン>SSRI(16%vs6%), ブプロピオン<エスシタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン |
これらの有害事象の頻度の違いは、処方薬の選択の指標になるのではないでしょうか。
相互作用も気になるところです
Pharmacokinetic properties and drug interactions - Drug Class Review: Second-Generation Antidepressants - NCBI Bookshelf
抗うつ薬によるCYP阻害
1A2 | 2B6 | 2D6 | 2C8/9 | 2C19 | 3A4 | 併用禁忌薬※1 | |
デュロキセチン | - | - | ++ | - | - | - | セレギリン |
---|---|---|---|---|---|---|---|
エスシタロプラム | - | - | + | - | - | - | セレギリン、ピモジド |
フルボキサミン | +++ | + | + | + | +++ | + | セレギリン、ピモジド、チザニジン、ラメルテオン |
パロキセチン | + | ++ | +++ | + | + | + | セレギリン、ピモジド、タモキシフェン※4 |
セルトラリン※2 | + | ++ | ++ | + | ++ | ++ | セレギリン、ピモジド |
ミルタザピン | + | - | - | - | - | + | セレギリン |
ベンラファキシン | - | + | + | - | - | - | セレギリン |
ミルナシプラン※3 | - | - | - | - | - | - | セレギリン |
※1国内の添付文書参照(H27.11時点)
※2セルトラリンは上記文献ほど阻害作用は強くないと記載している文献もある(Pharmacology. 2010;86(4):203-15)。(阻害の程度については一概には言えないのかもしれません)。
※3上記文献には記載ないが、Pharmacology. 2010;86(4):203-15にCYP阻害作用はないと記載あり
※4パロキセチンとタモキシフェンは併用禁忌扱いではないが、パロキセチンの添付文書に「タモキシフェンの作用が減弱されるおそれがある。併用により乳癌による死亡リスクが増加したとの報告がある」と記載。
Selective serotonin reuptake inhibitors and breast cancer mortality in women receiving tamoxifen: a population based cohort study. - PubMed - NCBI
BMJ. 2010 Feb 8;340:c693
SSRIがタモキシフェンの有効性を低下させるかを検討したコホート研究
対象:タモキシフェンを服用している66歳以上の乳がん患者(女性)2430名
<乳がんによる死亡リスク>
table2より
年齢などの交絡因子を調整したハザード比は、
併用期間の増加 | パロキセチン | セルトラリン | フルボキサミン | ベンラファキシン |
---|---|---|---|---|
0.25% | HR1.24(1.08-1.42) | HR1.00(0.88-1.14) | HR0.98(0.81-1.19) | HR0.67(0.41-1.09) |
0.5% | HR1.54(1.17-2.03) | HR1.00(0.77-1.29) | HR0.96(0.66-1.40) | HR0.45(0.17-1.20) |
0.75% | HR1.91(1.26-2.89) | HR0.99(0.67-1.47) | HR0.94(0.53-1.66) | HR0.30(0.07-1.31) |
<結論>
タモキシフェン治療中のパロキセチン併用は乳がん死亡リスクの増加と関連あり。
パロキセチンによるCYP2D6阻害作用がタモキシフェンの効果を減少させるという仮説を支持。
パロキセチンには代替薬(他のSSRI)がありますし、この組み合わせは禁忌扱いにしたほうが良いと思うのですが、このような研究結果が出ても、添付文書は併用注意のまま。
併用薬チェックはきちんと行わなくてはいけませんね。