pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

“併用注意”はスルーしていい??

お薬手帳が浸透してきて、服用歴がチェックできるようになってきました。
急に風邪で病院に飛び込んでも、お薬手帳があれば飲み合わせのチェックが可能となります。

では、何を元にチェックをしているのかというと原則、医薬品の添付文書になると思います。
“併用禁忌”は該当があれば疑義照会となるでしょう。
では、“併用注意”は??

たとえば、降圧剤のカンデサルタンと利尿剤は併用注意扱いです。
理由は「降圧作用の増強」で、「少量より開始するなど慎重に」と記載されています。
その一方でカンデサルタンは利尿剤との合剤も販売されていることからもわかるように、このような相互作用で疑義照会をかける薬剤師はまずいないと思います。過度な降圧に注意しながら併用しよう、という意味合いであり、別の薬に変更することを示唆した記述ではないと思います。

では、“併用注意”はチェックしないでよいかというとそんなことはありません。

たとえば、
ダサチニブ
めったにお目にかかることがない薬こそきちんとチェックする必要があります。
適応は白血病
重要な基本的注意として、白血球減少,好中球減少,血小板減少,貧血などが見られることがあり、定期的な血液検査を行うこととされています。

CYP3A4で代謝されるため、CYP3A4に関連した相互作用あり
ケトコナゾールとの併用によりダサニチブのCmaxが4倍、AUCは5倍。
CYP3A4阻害作用のない又は低い代替薬の使用が推奨

CYP3A4阻害作用のある薬といえばマクロライドも有名です。

<ダサニチブ服用中の患者にCAMが処方されたら…?>
ダサニチブの薬効を考えると、なるべく不本意な血中濃度の増加は避けたい薬です。
CAMによりダサニチブのCmaxやAUCがどの程度増加するかデータはありませんが、血中濃度の増加の可能性は十分にあります。“代替薬を推奨”と添付文書にあるとおり、CAMは避けて、CYPによる代謝が確認されていないAZMを同系統の代替薬として提案するという選択肢が浮かびます。


禁忌項目だけチェックして他の項目をスルーすると、相互作用による副作用発現という事態も起こり得るので要注意です。

添付文書は絶対だとは思いませんし、添付文書の批判的吟味も必要なのではないかと思いますが、やはり最低限チェックする必要のある文書です。
禁忌だけチェックして細かい部分はスルーなんてことのないようきちんと目を通して最適な治療の手助けをするのが大事だと思います。