セルトラリン
Efficacy of sertraline in the treatment of children and adolescents with major depressive disorder: two randomized controlled trials. - PubMed - NCBI
JAMA. 2003 Aug 27;290(8):1033-41.
大うつ病性障害(MDD)の青年・小児に対するセルトラリンの有用性を見たDB-RCT(2施設)
背景:MDDに対するSSRIの有効性・安全性・忍容性は確立されているが、青年・小児はデータが少ない
目的:小児のMDDに対するセルトラリンの安全性を評価
P:DSMⅣに基づいて診断された中等度~重症度のMDDの小児・青年(6~17歳)376人
E:セルトラリン50~200mg/d(n=189)10週間
C:プラセボ錠(n=187)10週間
O:小児うつ病評価尺度改訂版(CDRS-R)のベースラインからの変化と有害事象
※CDRS-Rについて
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3003451/
イントロダクションより
「うつ病の重症度や抑うつ症状の変化を評価するための評価尺度。ハミルトン評価尺度(Hamilton Rating Scale for Depression, HRSD)に基づいて6~12歳の小児の評価尺度としてつくられた。評価項目は17項目、総スコア17~113点)。子供・親との診察により臨床医が評価。40点以上がうつ病の指標、28点以下で症状寛解」
評価項目(table1)
学業の障害、引きこもり、睡眠障害、食欲の乱れ、過度な過労、短気、低自尊心、過度な罪悪感、抑うつ気分、泣く、自殺念慮、活動低下など。
※CGI-S(Clinical Global Impression of Severity)
臨床症状の全般評価に関する重症度の評価スケール
1.Normal, not at all ill(正常)
2.Borderline mentally ill(境界線上)
3.Mildly ill(軽度)
4.Moderately ill(中等度)
5.Markedly ill(顕著)
6.Severely ill(重度)
7.Among the most extremely ill patients(非常に重度)
ベースライン
セルトラリン | プラセボ | |
6~11歳(小児) | 86名 | 91名 |
12~17歳(青年) | 103名 | 96名 |
人種 | 白人71%、アジア人13.8% | 白人69.5%、アジア人12.3% |
結果
セルトラリン | プラセボ | |
CDRS-R(mean SD)ベース→10週後 | 64.3→34.1 | 64.6→38.8 |
CDRS-R総スコア40%減少の反応率 | 69% | 59% |
CGI-S | 4.57→3.33 | 4.54→3.55 |
有害事象
有害事象による試験中止
セルトラリン17名(9%)、プラセボ5名(3%)
小児
セルトラリン | プラセボ | |
不眠insomnia | 17名(19.8%) | 7名(8%) |
下痢diarrhea | 13名(15.1%) | 4名(4.5%) |
食欲不振anorexia | 9名(10.5%) | 2名(2.3%) |
嘔吐vomiting | 8名(9.3%) | 4名(4.5%) |
焦燥agitation | 7名(8.1%) | 2名(2.3%) |
尿失禁urinary incontinence | 6名(7%) | 0 |
紫斑purpura | 5名(5.8%) | 0 |
青年
セルトラリン | プラセボ | |
嘔吐 | 8名(7.8%) | 3名(3.1%) |
下痢 | 7名(6.8%) | 3名(3.1%) |
Sertraline in children and adolescents with major depressive disorder. - PubMed - NCBI
J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 2006 Oct;45(10):1162-70.
10週間二重盲検RCT、その後、24週のオープンラベルRCT
P:MDDの小児(6~11歳 n=177)、青年(12~17歳 n=199) CDRS-R45点以上、
E:セルトラリン(10週+24週)
C:プラセボ(10週)
O:CDRS-R、CGI-I
セルトラリンの用量
初回3日間25mg/日→3~14日間50mg日→その後は忍容性があれば良好な反応を得るまで2週間50mgずつ漸増、最大200mg/日
<二重盲検の結果>
小児
セルトラリン(n=84) | プラセボ(n=87) | |
CDRS-R | -24.05 | -22.2 |
CDRS-Rのfirst response | 15日 | 21日 |
CDRS-Rのfirst persistent response | 28日 | 28日 |
CGI-S | -1.32 | -1.1 |
CGI-I | 2.45 | 2.65 |
試験中止率 | 27.9% | 10.2% |
自殺関連事象 | 3件 | 0件 |
体重変化 | -0.17kg | 0.98kg |
青年
セルトラリン(n=101) | プラセボ(n=92) | |
CDRS-R | -21.55 | -18.2 |
CDRS-Rのfirst response | 22日 | 23日 |
CDRS-Rのfirst persistent response | 32日 | 32日 |
CGI-S | -1.13 | -0.92 |
CGI-I | 2.66 | 2.86 |
試験中止率 | 21.4% | 19.8% |
自殺関連事象 | 2件 | 2件 |
体重変化 | -0.55kg | 0.61kg |
→この研究、ちょっとわかりにくいのですが、10週間、盲検化してプラセボとのRCTを行い、その後はオープンラベルとなっています。resultは二重盲検の方のみ取り上げています。プラセボがけっこう効いていてほとんど差がありません。この文献では体重の変化について取り上げており、実薬群では成長期の小児/青年であるにもかかわらず減少傾向。消化器症状があって食事量が減ったのかな?と思いました。
小児におけるSSRIのセルトラリンですが、TCAと同じく、プラセボと大差がないという結果です。
かといって小児のうつ病を放置していいというわけではないと思いますので、大変悩ましい問題です。
このテーマは引き続き調べてみたいと思っています。
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