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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

抗精神病薬の薬理作用/せん妄に対する効果/EPS/高PRL/体重増加

精神神経科

抗精神病薬の剤形(内服)/等価換算>

一般名 商品名 剤形(内服) CP換算 投与上限
アリピプラゾール エビリファイ 錠/OD錠/散/内用液 4mg 30mg(うつ病は15mg)
オランザピン ジプレキサ 錠/ザイディス/散 2.5mg 20mg
クエチアピン セロクエル 錠/散 66mg 750mg
クロザピン クロザリル 50mg 600mg
リスペリドン リスパダール 錠/OD錠/散/内用液 1mg 12mg
パリペリドン インヴェガ 1.5mg 12mg
ペロスピロン ルーラン 8mg 48mg
ブロナンセリン ロナセン 錠/散 4mg 24mg
クロルプロマジン コントミンウインタミン 錠/散 100mg 通常1日50~450mgで適宜増減あり
ハロペリドール セレネース 錠/散/内用液 2mg 通常1日3~6mgで適宜増減あり

H27.6時点 注射薬は未記載
剤形の特徴:内用液は効果発現が早い


こちらは等価換算についての文献。
Dose Equivalents for Second-Generation Antipsychotic Drugs: The Classical Mean Dose Method. - PubMed - NCBI
Schizophr Bull. 2015 Apr
オランザピンの等価換算

オランザピン 1mg 2.57mg
アリピプラゾール 1.4mg 3.6mg
リスペリドン 0.4mg 1mg
クエチアピン 32.3mg 83mg
クロザピン 30.6mg 78.6mg
クロルプロマジン 38.9mg 100mg
ハロペリドール 0.7mg 1.8mg

CP換算とほぼ同等の結果となっています。


<D2受容体占拠率>
第一世代の抗精神病薬の治療至適D2受容体占拠率は、65~80%程度
クロルプロマジン300~600mg程度が目安

Evaluation of Antipsychotic Dose Reduction in Late-Life Schizophrenia: A Prospective Dopamine D2/3 Receptor Occupancy Study. - PubMed - NCBI
JAMA Psychiatry. 2015 Sep
晩年期の統合失調症では抗精神病薬の副作用が出やすいため、治療ガイドラインでは低用量を支持
晩年期におけるドパミン受容体占拠率は50~60%という結果(若年では65~80%)


統合失調症の症状>

陽性症状(主に急性期) 幻覚、幻聴、妄想、考想伝播(考えが他人に伝わっていると感じる)、支離滅裂
陰性症状(主に慢性期) 感情鈍磨、意欲消失、会話貧困、自閉


<受容体と薬理作用>

抗コリン作用 便秘、口渇、尿閉、認知機能障害、視力調節障害
ヒスタミンH1作用 鎮静、体重増加、食欲亢進
D2遮断作用 統合失調症の陽性症状改善、EPS、高PRL血症(乳汁分泌、無月経)、悪性症候群
α1遮断 起立性低血圧、鎮静
セロトニン5-HT2遮断 陰性症状改善、EPS軽減、認知機能障害改善、食欲亢進、体重増加、高血糖
セロトニン5-HT1A刺激 抗不安作用、EPS軽減


<各種抗精神病薬の作用や特徴>

一般名 作用 適応 副作用/禁忌 特徴
クロルプロマジン D2遮断、5-HT2遮断、H1遮断、α1遮断(強)、抗コリン 躁病、神経症などさまざまな適応あり 各受容体の遮断によるさまざまな副作用あり 鎮静作用、制吐作用あり
ハロペリドール D2遮断(強)、抗コリン(弱)、α1遮断(弱)、H1遮断(弱) 躁病にも適応あり パーキンソンに禁忌 せん妄や化学療法・オピオイドによる悪心に応用
スルピリド D2遮断 消化性潰瘍/うつ病の適応あり(統合失調症では高用量) 高プロラクチン(PRL)血症※5をきたしやすい 末梢性D2遮断による胃腸機能亢進作用あり
アリピプラゾール ドパミン部分作動薬DPA※1、弱いH1遮断・α1遮断、弱い5-HT1A作動、5-HT2A遮断 双極性障害の躁症状、SSRIorSNRI等との併用で治療抵抗性のうつ病 血糖上昇の警告あり慎重投与(禁忌ではない)、過鎮静・体重増加のリスク低、投与初期はドパミン刺激による不眠・焦燥・胃腸症状 定常状態に2週間かかる、気分安定化、抗うつ効果あり、EPSは起こしにくいがアカシジアは起こしやすい※6
オランザピン MARTA【5-HT2A、5-HT2C、D2、H1、α1、α2、M】遮断 双極性障害の躁症状・うつ症状にも適応あり 糖尿病に禁忌、EPSは少ないが体重増加※4、糖脂質代謝異常あり せん妄に応用※3、制吐作用あり(化学療法やオピオイド療法時)、食欲増進効果あり(終末期に応用)
クエチアピン MARTA 強いH1遮断・α1遮断(鎮静・催眠効果あり)、弱いD2遮断・5-HT2A遮断、5-HT1A刺激、α2遮断 統合失調症のみ 糖尿病に禁忌、過鎮静・体重増加※4・起立性低血圧に注意 D2親和性が弱く速やかに解離するためEPS少ない→BPSD-GLにおいてEPS症状/DLBの第一選択、せん妄※3・不眠に応用(作用時間短く眠前投与で翌朝まで持ち越しにくい)
クロザピン MARTA 強い5-HT2A・D4遮断、弱いD2遮断、5-HT2C遮断、H1遮断、M遮断、α1遮断、5-HT1A刺激 治療抵抗性統合失調症(原則として投与開始後18週間は入院管理下で投与 禁忌多、糖尿病リスク高いが禁忌ではなく原則禁忌、重大な副作用として心筋炎(頻脈、胸痛、呼吸困難、倦怠感、発熱、咽頭痛)、DKA、無顆粒球症など 希死念慮・敵意・攻撃性に有効。クロザリル患者モニタリングサービスCPMSの利用が必須
リスペリドン SDA(5-HT2遮断>D2遮断)、α1遮断もあり 統合失調症のみ(分2) D2遮断によるPRL上昇による月経不順/1日6mg以上ではEPSのリスク増、α遮断による起立性低血圧 制吐作用あり、せん妄に応用※3、BPSD-GLにおいて糖尿病合併の第一選択、内用液は即効性あり※2
パリペリドン SDA(5-HT2遮断>D2遮断)、α1遮断もあり 統合失調症のみ(分1) Ccr50ml/min未満は禁忌(腎排泄のため相互作用は少ない)、他リスペリドンと同様 【リスペリドンの活性代謝物。経口リスペリドンと併用不可】【薬物放出制御システム(OROS)のため、噛む・割る・砕く・溶かす・一包化→すべて不可。ゴーストタブレット】【用法は食後投与(空腹時と比べ、Cmax、AUCが1.3倍)】
ペロスピロン SDA(5-HT2遮断>D2遮断)、5-HT1A刺激(→抗不安作用) 統合失調症のみ D2親和性が短時間で低下するので、リスペリドンよりEPSのリスク低 抗不安作用あり、空腹時と比べCmax1.6倍/AUC2.4倍→食後投与、半減期短い
ブロナンセリン DSA(D2遮断作用>5-HT2遮断作用) 統合失調症のみ CYP3A4で代謝されアゾール系など併用禁忌あり 用法は食後投与(空腹時は吸収低下)

※1 DPA:ドパミンが多いところでは遮断→抗精神病作用、ドパミンが少ないところではアゴニスト作用
※2 リスパダール内用液の服用法:混合OK【みそ汁、お吸い物、牛乳、オレンジジュース、カルピス、ポカリスエットCCレモン】、混合不可【コーラ、紅茶、ウーロン茶、市販のペットボトルのお茶】

※3せん妄について
Antipsychotic medications for the treatment of delirium: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. - PubMed - NCBI
J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2015 Sep
せん妄に対する抗精神病薬のRCT(プラセボor標準治療との比較)のメタ解析
アリピプラゾール、クロルプロマジンハロペリドール(経口・禁注)、オランザピン(経口・禁注)、クエチアピン、リスペリドンなど
せん妄に対する抗精神病薬の応答率 RR=0.22, NNT=2
Clinical Global Impression of Severity(CGI-S) SMD=-1.57
CGI-S:全般評価に関する重症度、1~7段階(1が正常、7が非情に重度)

副作用:口渇(RR=13.0, NNH=5)、鎮静(RR=4.59, NNH=5)

SGA(第二世代)はハロペリドールより作用発現が速く(TTR SMD=-0.27)、EPS発現率が低い(RR=0.31、NNH=7)

ハロペリドールよりSGAのほうが有効性・安全性が高いと結語
うーん、どうでしょうか。ハロペリドールの注射は即効性ありそうですけど…。
フルテキストが読めないのでなんとも言えませんが、アブストラクトを見る限りではSGA推しのようです。


※4体重増加について
Pharmacological management of atypical antipsychotic-induced weight gain. - PubMed - NCBI
CNS Drugs. 2008
CATIE studyによると、7%以上の体重増加をきたした割合は
オランザピン30%
クエチアピン16%
リスペリドン14%
ペルフェナジン12%
食欲の刺激が体重増加の原因


Cardiometabolic risk of second-generation antipsychotic medications during first-time use in children and adolescents. - PubMed - NCBI
JAMA. 2009 Oct
こちらは平均年齢14~15歳が対象。
SGA12週投与後の体重増加は?

ベースラインからの体重増加 ウエスト増加
アリピプラゾール 8.1% 5.4cm
オランザピン 15.2% 8.6cm
クエチアピン 10.4% 5.3cm
リスペリドン 10.4% 5.1cm
治療なし 0.65% 0.7cm

成長期とはいえ、3ヶ月でこんなに増えるのか、という印象。やはりオランザピンがもっとも体重増加との関連が強いようです。

Weight gain and antipsychotics: a drug safety review. - PubMed - NCBI
Expert Opin Drug Saf. 2015 Jan
体重増加についてのレビュー(2010~2014年のデータを解析)

高リスク オランザピン、クロザピン
中リスク クエチアピン、リスペリドン、パリペリドン、アミスルピリド、アセナピン、イロペリドン
低リスク アリピプラゾール、ルラシドン、ジプラシドン

体重増加は抗精神病薬投与のすべてにおいて発生し、第一世代でも起こりうる一般的な有害事象であり、体重増加の注意は抗精神病薬投与において不可欠。
BMI、若年者がとくに影響を受けやすい。
体重増加はおもに治療開始から数週以内に起こりやすい(within the first weeks of treatment→“weeks”となっているので数週間と訳しました)


※5 高プロラクチンPRL血症
D2遮断により、下垂体のPRL分泌抑制効果が弱まり、高PRL血症をきたす
高PRL血症の症状
男性:性欲低下、女性化乳房など
女性:性欲低下、乳汁漏出、無月経、不妊など

The effects of novel and newly approved antipsychotics on serum prolactin levels: a comprehensive review. - PubMed - NCBI
高PRL血症は上限値を上回るPRL値の持続とされるが、研究間で上限値がまちまちであるため研究間の比較が困難
一般に高PRL血症の頻度はFGA>SGA

Conclusionより
抗精神病薬によるPRL上昇は、性差(女性>男性)や用量と関連している
成人より小児/青年のほうがPRL上昇に脆弱で高PRL血症のリスクが高い可能性がある(抄録には小児/青年も成人とPRLプロファイルは同等のようであると記載されてますが、本文では高リスクである可能性を示唆しています)。
特に投与初期にPRLが上昇しやすい。

スルピリド:FGAのうちとくに高PRL値症のリスクが高いと知られている
リスペリドン/パリペリドン:PRLの大きな上昇と関連あり(比較的低用量でも上昇することがある)
オランザピン:中等度の上昇と関連
クロザピン:PRL上昇するがほとんどが正常範囲に留まる。
クエチアピン:すべての投与量において、PRL値はほとんどかわらないもしくは減少。
アリピプラゾール:ほとんどの研究において、小児~成人でPRL値は不変、もしくはプラセボより減少することもある。もっとも良好なPRLコントロールができる。
(※over all dosagesとの記述が多用されてますが、Weblio等で上手く翻訳されず、“すべての投与量において”、と訳しました。)

table4より
高PRL血症のリスク(本邦未発売品含)
アミスルピリド・パリペリドン・リスペリドン>オランザピン、ジプラシドン>クロザピン、アセナピン、イロペリドン>クエチアピン>アリピプラゾール


アリピプラゾールは薬剤性の高PRL血症を改善する可能性が示唆されています
アリピプラゾール補助療法は抗精神病薬誘発性高PRL血症を改善する? - pharmacist's record


※6 アカシジアについて
アカシジアにβ遮断薬やミルタザピンが有効? - pharmacist's record


総括として米国家庭医学会のレビューをピックアップ
Adverse Effects of Antipsychotic Medications - American Family Physician
Am Fam Physician. 2010 Mar
抗精神病薬の有害事象について

FGA:第1世代抗精神病薬
SGA:第2世代抗精神病薬

Clinical recommendation
クロルプロマジンチオリダジンなどのD2遮断作用の弱いFGAは、SGAよりもEPSを引き起こす可能性は高くない(エビデンスレベルA)
・FGAとリスペリドンは高PRL血症を引き起こすことがあるので、その徴候に注意する必要あり(エビデンスレベルC)
・SGAとくにクロザピン、オランザピンは体重増加やメタボリックシンドロームについてのモニタリングが必要(エビデンスレベルC)
・高齢者においては、抗精神病薬は心疾患による突然死や、脳血管障害による死亡率増加に注意して使用(エビデンスレベルA)

table3に各種抗精神病薬の作用の比較あり。

抗コリン作用 EPS 高PRL血症 起立性低血圧 鎮静 T2DM 体重増加
クロルプロマジン +++ + ++ +++ +++ + ++
ハロペリドール + +++ +++ + + + +
アリピプラゾール 0 + 0 + + + 0
オランザピン + + + + ++ ++ +++
クエチアピン + 0 0 ++ ++ + ++
リスペリドン 0 ++ +++ ++ + + ++
クロザピン +++ 0 0 +++ +++ ++ +++

高齢者における死亡リスクについては以下の文献にて示唆されています
・Risk of death with atypical anti-psychotic drug treatment for dementia: meta-analysis of randomized placebo-controlled trials
・Risk of death associated with the use of conventional versus atypical antipsychotic drugs among elderly patients

上記文献も読んでみたいところですが、死亡リスクや嚥下機能の影響など、高齢者における使用については別途記事にしたいと思います。


さて、最後に取り上げる文献はこちら。安定している統合失調症患者において薬を中断したらどうかを検討した文献です。
The Use of Continuous Treatment Versus Placebo or Intermittent Treatment Strategies in Stabilized Patients with Schizophrenia: A Systematic Review ... - PubMed - NCBI
CNS Drugs. 2015 Aug
P:安定した統合失調症患者
E:抗精神病薬の継続的治療
C:間欠投与orプラセボ投与
O:統合失調症の再発・入院リスク、再発までの時間
フォローアップ期間:6ヵ月以上
<結果>

間欠投与vs継続投与 プラセボvs継続投与
再発リスク OR3.36(95%CI 2.36-5.45 p<0.0001) OR5.64(95%CI 4.47-7.11 p<0.0001)

抄録しか読めませんが、統合失調症においては安定していたとしても、薬を中断するのは難しいようです。
BPSDを有する高齢認知症患者における抗精神病薬中断では、また違った結果になるかもしれませんが、統合失調症においてはコンプライアンス維持が重要だと思います。

以上、抗精神病薬の使い分けをきれいにまとめたいと思ったのですが、薬理作用などかなり複雑ですね。
適応疾患など、今後変更となる可能性もあるので、最新のDI情報を確認して頂くようお願い致します。