pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

どんな症状で脳卒中を疑う?

先日、脳卒中と血圧の関係を調べた文献をピックアップしましたが、脳卒中を疑ったらどのような所見をチェックすればよいでしょうか

Is this patient having a stroke? - PubMed - NCBI
JAMA. 2005 May 18;293(19):2391-402.

構音障害 急性顔面麻痺 上肢回内落下

これらのうち1つ以上あてはまれば、LR5.5(95%CI 3.3-9.1)
1つも当てはまらなければ、LR0.39(95%CI 0.25-0.61)

その他、脳卒中TIAと関連の強い所見は、
突然の発声の変化、視野喪失、複視、しびれやうずき、麻痺や脱力感、非起立性の浮動性めまい


<構音障害>
有名なのは「パタカ」の発声
・舌音(舌の前方が口蓋と接する音:サ行、タ行、ナ行、ラ行など):舌下神経
・口蓋音(舌の後方が口蓋と接する音:カ行):迷走神経(軟口蓋麻痺)
・口唇音(口唇が閉じる音:バ行、パ行、マ行):顔面神経
「パタカ」などの、これら3つ音を組み合わせた言葉が言えなくなる。


<顔面麻痺>
中枢性(脳梗塞など):鼻唇溝の浅薄化、片側の口角の下垂(額の皺や眉毛の挙上は可能でほぼ左右対称。額は左右支配)
末梢性(ベル麻痺など):鼻唇溝の浅薄化、片側の口角の下垂、片側の眉毛の下垂など顔面全体の片側が麻痺する。


<上肢回内落下(バレー徴候)>
手のひらを上にして両腕を水平に挙上

目を閉じて、腕をそのまま水平に保つ

片側の腕が内側に回内し、下方へ落下。
(手のひらを下にして挙上させ、障害側の小指だけ外に開くのを第5手指徴候と呼び、同様に運動麻痺があることを示す)

※寝たきりの場合、上肢を45度に挙上して落下するかを見る方法もある。


<下肢のバレー徴候>
うつぶせになり下腿(膝からつま先)を90度に立てる。両足のかかとは離す

片側の下腿が自然に倒れていく


<その他、運動麻痺の検査>
腕回し試験:両手を胸の前でグルグルと回す。麻痺があると麻痺側の腕の周りを麻痺のない腕が回る。健常者だとお互いに腕が回る。
指回し試験:腕回し試験と同じ要領で、人差し指や親指をお互いにグルグルと回す。



以上のような所見が重要ですが、患者さんに注意喚起する場合は以下のような自覚症状を説明しておくと良いと思います。

ろれつが回らない
口の片側からよだれがたれる
片側の手足や顔面のしびれ・感覚がおかしい(お風呂の熱さの感じ方など)
片側の手足の脱力
めまい(とくに歩行障害を伴うめまい)
言いたいことが言葉にならない
意識が朦朧とする
他人の話が理解できない
片目が見えない
視野の半分がかける
ものが二重に見える
座ったり立ったり歩いたりするときバランスがとれない
突然の激しい頭痛・嘔吐(→主にくも膜下出血

などなど

脳卒中、怖いですね。
迅速な対応が必要とされる疾患なので、画像所見をとる前に、病歴だけで診断or除外がほぼ確定的といえるような所見があればよいのですが、さまざまな病歴をとり、総合的に評価することになるのではないかと思います。

脳卒中と血圧との関連についてはこちら↓
意識障害+血圧上昇→脳卒中の可能性あり? - pharmacist's record