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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

意識障害+血圧上昇→脳卒中の可能性あり?

意識障害の鑑別として、AIUEOTIPSが有名ですが、今回は脳血管障害の鑑別について取り上げてみたいと思います。

Acute cognitive impairment in elderly ED patients: etiologies and outcomes. - PubMed - NCBI
この後ろ向きコホートによると、60歳以上の高齢者の意識障害の原因は

施設入居者(n=40) 独居(n=105)
感染症 42.5% 13.3%
脳血管障害 10.6% 22.9%

高齢者の意識障害というと脳卒中を連想しがちですが、この米国の研究結果では施設入居者において感染症も頻度が高いです。
この研究は救急患者が対象ですが、軽度の意識障害では薬剤性の頻度も増すのではないかという気もします。



意識障害の鑑別にバイタルサイン(血圧)が役に立つということを示唆した文献が日本から発表されています
Using vital signs to diagnose impaired consciousness: cross sectional observational study. - PubMed - NCBI
BMJ. 2002 Oct 12;325(7368):800.
意識障害とバイタルサインの関係性を検討
患者:GCS15未満の意識障害を呈する529名の患者(15~97歳、平均年齢65歳)

脳内病変 非脳内病変
平均年齢 65.8歳 62.7歳
女性率 43.9% 45.2%
GCS※ 9.88 9.49

両群に大きな偏りは無し

GCS(glasgow coma scale)

開眼Eye opening 自発的開眼4点>呼びかけにより開眼3点>痛みで開眼2点>開眼せず1点
最良言語反応best Verbel response 見当識あり5点>会話混乱4点>不適当な言葉3点>理解不明な発声2点>発声なし1点
最良運動反応best Motor respponse 命令に従って四肢を動かす6点>痛み刺激で手で払いのける5点>指への痛みに四肢を引っ込める4点>痛みに対して緩徐な屈曲3点>痛みに対して緩徐な伸展2点>反応なし1点

GCSややこしいですね…。評価者によって点数が変わりそうな気もします。評価者ごとの点数の一致率が低いという文献も出ているようです。



脳内病変と血圧との関係は、

脳内病変(人数) 非脳内病変(人数) LR
SBP(mmHg)      
~90 2 41 0.03
90~99 3 27 0.08
100~109 4 33 0.08
110~119 12 40 0.21
120~129 18 28 0.45
130~139 28 13 1.5
140~149 38 14 1.89
150~159 27 9 2.09
160~169 31 5 4.31
170~179 35 4 6.09
180~ 114 3 26.43
DBP(mmHg)      
~50 4 18 0.13
50~59 8 28 0.16
60~69 23 50 0.26
70~79 33 28 0.67
80~89 76 33 1.31
90~99 61 8 4.34
100~109 49 5 5.58
110~ 48 2 13.67

血圧は上記のとおり相関あり。
脈拍については、血圧のようなはっきりとした明快な相関関係はみられず。どちらかというと脳内病変のほうがやや徐脈傾向(Figure A1より)

脳内病変の最終診断

脳卒中 83%
てんかん 9%
脳腫瘍 4.2%
髄膜炎or脳炎 2.1%

脳卒中脳出血104名、脳梗塞97名、くも膜下出血(SAH)41名、硬膜下血腫17名)

非脳内病変の最終診断

低酸素血症or虚血※ 44%
薬物中毒 19%
肝性脳症 9.2%
糖尿病性昏睡 5.5%

敗血症などが含まれる


意識障害がある場合、血圧の測定も重要であるということを示唆した素晴らしい論文だと思います。

意識障害で血圧が高い場合は、顔面弛緩・片麻痺・構音障害などの脳卒中を疑う所見がないかチェックが必要ですね。