喘息の治療はとても大事ですが、安定してるとうっかり薬を忘れてしまう、もしくは毎日使わなくてもいいのではないか?と思ってしまう方も多いのではないでしょうか。
そこで成人の喘息治療のコンプライアンスに関する文献を…とも思いましたが、今回はお子様の喘息治療についての文献をピックアップします。
小児への吸入ステロイドICSは身長等への影響などもあり、ご両親としてはなるべくステロイドの投与は最小限にしたいという希望もあるのではないでしょうか。
ICSの連日投与と間欠投与を比較した文献
Daily or intermittent budesonide in preschool children with recurrent wheezing. - PubMed - NCBI
N Engl J Med. 2011 Nov
P:1歳0ヶ月~4歳5ヶ月の喘息患児(前年に4回以上の喘鳴エピソードあり、1回以上のステロイド全身投与を必要とする増悪あり)(除外:前年に喘鳴で2回以上入院、半年以上の経口ステロイド投与)
E:事前に定義した気道疾患発症時にブデソニド吸入1mgを1日2回、7日間 n=139
C:ブデソニド吸入0.5mg 1日1回夜 連日投与 n=139
O:経口ステロイドを必要とする喘息増悪の頻度
※事前に定義した気道疾患発症時についてはSupplementary AppendixのFig.S2に記載あり
間欠投与E群はプラセボを連日投与し、気道症状発症時にブデソニド1mg2回/日 吸入
連日投与C群はブデソニド0.5mgを連日投与し、気道症状発症時に朝プラセボ、夜にブデソニド0.5mg吸入
ITT解析されているが脱落が多い印象
間欠投与E群139→113名(26名脱落)
連日投与C群139→100名(39名脱落)
<結果>
喘息増悪の頻度に差は無し
間欠投与(E) | 連日投与(C) | relative rate/Mean Difference | |
---|---|---|---|
患者ごとの年間増悪(要 経口PSL投与) | 0.95(95%CI 0.75-1.20) | 0.97(95%CI 0.76-1.22) | 0.99(95%CI 0.71-1.35 P=0.60) |
ブデソニド累積用量 | 46mg | 150mg | -104mg |
身長変化 | +8.01cm | +7.76cm | +0.26cm(−0.17 to 0.68) |
資金提供はthe National Heart, Lung, and Blood Institute
この文献を大雑把にまとめると、
「喘息患児に対する吸入ステロイドの間欠投与と連日投与の効果は同等」となりそうですが、吸入ステロイドのコンプライアンスが悪くても増悪頻度は変わらないというわけではありません。
(有意差が出ていない一因として、連日投与群は気道症状発症時もICSを増量せず、連日投与時と同じ用量となっていることもあげられると思います。)
間欠投与といっても、ICS投与を必要とする病状など、きちんと指導されており、連日投与群も間欠投与群もコンプライアンスが保たれているという印象を受けます(脱落も多いですが)。アドヒアランスは両群ともに95%程度。「患児の親は喘息の症状(日中・夜間の咳、喘鳴など)の日記をつける」との記載もあり病状の変化もきちんと管理されているようです。
就学前の幼児ということで、ICSの暴露をなるべく最小限にするための、徹底的にコントロールされた間欠投与であり、患者の判断による適当な自己調節が許容されるとは思えません。
問題なのは、喘息は死亡することもある病気だということです。死亡例は吸入ステロイドの普及により減少傾向にはありますが、国内で年間2000人近くもの患者さんが亡くなっています。
喘息死委員会レポート2009によると、登録された気管支喘息死の症例222例において、不明・無記載を除くと,軽症28%,中等症29%,重症43%となっています。軽症でも死に至ることがあるということです。
例えば花粉症における点鼻ステロイドについてであれば、自己調節したところで花粉症で亡くなることは無いですから、別にいいかなと思ってしまいますが、気管支喘息となると慎重にならざるを得ません。
というわけで、この文献は小児喘息専門医が細かいコントロールをする上で貴重な研究結果だと思いますが、処方医の自己調節の指示無しで、患者さんが自己判断でICSを調節をするのはいけません。喘息はきちんと治療を続ければほとんどがコントロール可能と言われていますので、喘息死をゼロにするためにも処方されたお薬は指示通りに継続することが大事だと思います。