ワーファリンからNOACへの切り替えの際には、ワーファリンを中止し、PT-INRが治療目標値の下限を下回ってからNOACを開始するのが一般的かと思います。
ビタミンK拮抗薬(ワルファリン)からNOACへの切り替えのPT-INRの目安(各種NOACのDI情報参照)
タビガトラン | PT-INR2.0未満 |
リバーロキサバン | 治療域の下限以下(70歳未満:INR2.0、70歳以上INR1.6) |
アピキサバン | PT-INR2.0未満 |
エドキサバン | 治療域の下限以下 |
※リバーロキサバンとエドキサバンはINRの目安が治療域の下限以下となっており、70歳以上ではINR1.6未満ということになるが、1.6未満では脳塞栓症が再発した場合に重症化しやすいため1.6~2.0の間で切り替えることもある。
では、今日の臨床疑問です。
「ワーファリン中止後、何日後にPT-INRを測定するとよいか?」
ワーファリン中止後のINRの推移を検討した文献を探してみました。
Temporary discontinuation of warfarin therapy: changes in the international normalized ratio. - PubMed - NCBI
Ann Intern Med. 1995 Jan
ワーファリン療法一時中止後のINRの減少率を検討
外来患者22名の前向き評価
ワーファリン最後の投与から、20,65,115,185時間後にINR測定
参加者のINRの平均値は2.6
ワーファリン中止65時間(2.7日)後のINRの平均値1.6(range1.11 to 2.16)。22人中20人がINR1.2以上
ワーファリン中止115時間(4.7日)後のINR平均値1.1。22人中5人がINR1.2以上
(INR2.6→2.7日後→INR1.6→2日後→INR1.1)
毎日INRを検査した5名の患者のデータによると、
INRは指数関数的に減少し、半減期は0.52~1.2日。高齢なほど、INRの減少が遅い
確実にINRが1.2未満にするには、INR2.0~3.0の間でコントロールされている患者で96〜115時間(4回投与)留保するべきと結論
この文献は術前のワーファリンの休薬期間を検討しているため、NOACへの切り替えの目安には適さないかもしれませんが、INRの減少率の参考になるかと思います。最後の投与から48時間~72時間程度あけてから(ワーファリンの投与を1~2日間休薬する)、PT-INRを測定するのが妥当なのかな?という印象ですが、実際、循環器科ではどのように対応しているのか知りたいところです。
少量のワーファリン(1.5㎎/日以下)でコントロールされているケースはワーファリンが効きやすいと考えられ、凝固能の回復に時間がかかるので、高用量でコントロールされているケースよりも長い休薬期間を必要とするというエキスパートオピニオンもあるようです。投与量1.5mgを境に休薬を1日にするか2日にするか決めるのも一考かと思います。