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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

1型糖尿病の厳格な血糖コントロール(DCCT/EDIC)

1型糖尿病(T1DM)の厳格な血糖コントロールの効果を検討したDCCT試験の患者を追跡した文献が出ていました。

まずはDCCT。
The effect of intensive treatment of diabetes on the development and progression of long-term complications in insulin-dependent diabetes mellitus.... - PubMed - NCBI
N Engl J Med. 1993 Sep
オープンラベルで評価者が盲検化されたRCT(PROBE)
追跡期間6.5年(3~9年)
P:T1DMの患者(1次予防コホート726名(罹病期間2.6年)、2次予防コホート715名(罹病期間9年)に層別化。平均年齢は27歳(13~39歳)、平均HbA1c8.8~9%、平均血糖値230、平均体重は標準体重の103~105%)
E:インスリン持続注入or1日3回以上のインスリン注射、1日4回以上の血糖測定にてインスリン単位を調整。目標血糖値は70~120、食後血糖値180未満、HbA1c6.05%未満
C:中間型と速効型インスリンの混合製剤を1日1~2回注射(毎日の微調整は無し)、食事療法、運動療法、血糖測定による自己管理
O:糖尿病性網膜症の進展(網膜症の指標となるETDRSの3段階以上の変化)、腎障害、神経障害、大血管障害、QOLなど複数
<結果>
HbA1cは、
標準治療で9%前後で推移、厳格治療で7%前後で推移

1次予防コホート

標準治療(/100人/年) 厳格治療(/100人/年) リスク減少
網膜症 4.7人 1.2人 76%
尿中アルブミン≧40mg/24hr 3.4人 2.2人 34%
臨床的神経障害(5年間) 9.8人 3.1人 69%

2次予防コホート

標準治療(/100人/年) 厳格治療(/100人/年) リスク減少
網膜症 7.8人 3.7人 54%
尿中アルブミン≧40mg/24hr 5.7人 3.6人 43%
臨床的神経障害(5年間) 16.1人 7.0人 57%

有害事象

標準治療(/100人/年) 厳格治療(/100人/年)
低血糖(要治療) 19回 62回
低血糖による昏睡orけいれん 5回 16回

体重が約5kg増加
死亡や心筋梗塞については有意差無し
(若年なので死亡や心筋梗塞はイベント数自体が少ないかと思いますが)

網膜症の評価ETDRSとは画像所見らしくて代用のアウトカムっぽいですが(腎症の評価も尿中アルブミンです)、標準治療のようにHbA1c9%という高値での推移はヤバそうだなってことと、かといって厳格コントロールによる低血糖も恐いなっていう印象。
当時はおそらく超速攻型や持効型のインスリン注射はなかったかと思うので、低血糖を起こさずに厳格コントロールするのは難しかったかと思います。超速攻型と持効型でbasal-bolasでコントロールすれば低血糖リスクは減るかもしれません。


さて、このDCCTの長期フォローアップの結果がこちら(EDIC)。
Association between 7 years of intensive treatment of type 1 diabetes and long-term mortality. - PubMed - NCBI
JAMA. 2015 Jan
平均27年長期フォローアップ、追跡率はなんと99.2%、1429名
DCCT終了後は、厳格治療と標準治療の区別はなくなり、HbA1cの差もなくなったようです。

標準治療64名、厳格治療43名が死亡。
全死亡の絶対リスク差:-109人/10万人/年(95% CI, -218 to -1)
HR= 0.67(95%CI 0.46-0.99 P = 0.045)

死因は心血管死22%、がん20%、急性糖尿病合併症18%、事故or自殺17%

全死亡に関連していたのはHbA1c高値と、尿中アルブミン

HbA1c8.8% vs HbA1c8%:HR1.56 (1.35-1.81) 約10%相対的に高値で、死亡リスク増
尿中アルブミン≥40mg/24hr:HR2.20(95%CI 1.46–3.31)

27年間厳格治療を続けていたわけではありませんが、最初の6.5年、厳格治療を行ったことで、全死亡が減るというlegacy effectが示唆されました。


この結果を中高年のT2DMにあてはめることはできないですが、若年のT1DMの場合、低血糖に注意しながらきちんと血糖コントロールを行うことは長期予後を改善すると考えられます。
DCCTのHbA1c値はだいたい7%vs9%なので、そこまで無理に下げなくても良さそうな印象です。若年でHbA1cが9%で6.5年も推移したことが問題なのではないでしょうか。