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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

「シミに効く薬はありますか?」→どうする?

トラネキサム酸が肌のシミの改善を目的として自費で処方されているケースを時々見かけるので、ちょっと調べてみたいと思います。

そもそもシミとはなんでしょうか。

肝斑Melasma
早くて思春期、好発年齢は30~40代
俗にいう「シミ」とは、すべて肝斑を指すのではなく、老人性色素斑や顔面真皮メラノサイトーシス、化粧品などによる接触皮膚炎後の色素沈着なども含まれる
(トラネキサム酸の有効性が示唆されているのは肝斑)

<症状>
顔の頬骨に沿って左右対称性にできる薄褐色のシミ。こめかみまで及ぶことがある。
形状は、「三角形」「筆で書いたような帯状」「地図状」「蝶の羽」などと称される。
※斑点状のシミは生じない(面で広がる)
※目の下の頬骨に沿ってできるが、眼瞼(目の縁)にはできない。
※炎症や痒みは生じない

<リスク因子>
紫外線(夏季に増悪し、冬季には軽快することが多い)→サンスクリーン剤が有用
妊娠や経口避妊薬を契機に発症することがある(リスクの程度は不明)

<鑑別疾患>

老人性色素斑 中年以降、黒っぽく境界鮮明、左右非対称だがたまたま両頬対称に出来ることあり、点状の色素斑あり
顔面真皮メラノサイトーシス(FDM) 境界不鮮明、左右対称、両頬や額にできる、点状の色素斑あり、季節による増悪が少ない
接触性皮膚炎 紅斑・掻痒あり、炎症後に褐色のシミが残ることあり

<治療>
トラネキサム酸の内服:シミの元であるメラニンを作り出す細胞メラノサイトの活性化を阻害
※老人性色素斑には有効とされているレーザー治療は肝斑の悪化を招くことがある(一時的に薄くなっても1ヶ月程度でかえって濃くなる)
ハイドロキノン外用剤の塗布:メラニン合成阻害
などがありますが、治療ガイドラインがないのが現状です。



まずはトラネキサム酸の有効性について文献を検索してみました。
検索ワードは「tranexamic acid melasma」です。

Oral tranexamic acid for the treatment of melasma. - PubMed - NCBI
Kathmandu Univ Med J (KUMJ). 2012 Oct-Dec
前向き介入のランダム化比較試験(盲検化の記載なし)

肝斑患者260名
GroupA:ルーチンの局所療法+経口トラネキサム酸カプセル250mgを1日2回
GroupB:ルーチンの局所療法
フォローアップ3ヶ月
肝斑発症面積及び重症度指数(MASI:Melasma Area and Severity Index )に基づいて評価

開始 8週後 12週後
GroupA 11.08±2.91 8.95±2.08 7.84±2.44
GroupB 11.60±3.40 9.9±2.61 9.26±3

経口トラネキサム酸を追加したほうが有効と結論


Treatment of melasma with oral administration of tranexamic acid. - PubMed - NCBI
Aesthetic Plast Surg. 2012 Aug
74人の肝斑患者にトラネキサム酸250mg錠を1日2回、6ヶ月投与
(★比較試験ではない)
<結果>

excellent(10.8%,8/74) good(54%,40/74) fair(31.1%,23/74) poor(4.1%,3/74)

副作用:胃腸の不快感(5.4%)、月経過少(8.1%)

こちらは対照群がないので微妙な試験です。
服用開始が夏だったら、半年投与で評価するのが冬になります。夏に悪化、冬に軽減する傾向にあるので、なにもしないでもこのような結果になるかもしれません。
投与開始と同時に紫外線対策をした場合も同様に良い結果が得られると思います。



トラネキサム酸と一緒に処方されることがあるのがビタミンCです。
次は、「oral ascorbic acid melasma」で検索してみました。

ビタミンC単独で有効性を検討した文献は見つかりませんでしたが、下記の文献が興味を引きました。
A randomized, double-blind, placebo-controlled trial of oral procyanidin with vitamins A, C, E for melasma among Filipino women. - PubMed - NCBI
Int J Dermatol. 2009 Aug
肝斑に対する経口プロシアニジン、ビタミンA,C,Eの有効性と安全性を検討したDB-RCT
P:マニラ、フィリピンの肝斑患者、女性60名(→56人が試験完了)
E:プロシアニジン、ビタミンA,C,Eの試薬1日2回経口投与(8週間)
C:プラセボ
O:有効性(MASI)と安全性

<結果>
色素沈着やMASIスコアは有意な減少、有害事象はほとんどなかった

プロシアニジン
抗酸化作用を持つポリフェノールの一種で、りんごポリフェノールの主成分(りんごの皮に多く含まれる)

肝斑の改善には抗酸化作用のある栄養補給も有効かもしれません。



内服薬としてはトラネキサム酸やビタミンCが用いられますが、外用薬としてはハイドロキノンやトレチノインが用いられるようです。
Interventions for melasma. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2010 Jul
肝斑のさまざまな局所療法のRCTのメタ解析

E C 肝斑の軽減
3種混合クリーム(ハイドロキノン、トレチノイン、フルオシノロン) ハイドロキノン単剤 RR1.58(95%CI 1.26 to 1.97)
3種混合クリーム(ハイドロキノン、トレチノイン、フルオシノロン) ハイドロキノン、トレチノイン RR2.75(95%CI 1.59 to 4.74)
3種混合クリーム(ハイドロキノン、トレチノイン、フルオシノロン) トレチノイン、フルオシノロン RR14.00(95%CI 4.43 to 44.25)
3種混合クリーム(ハイドロキノン、トレチノイン、フルオシノロン) ハイドロキノン、フルオシノロン RR10.50(95%CI 3.85 to 28.60)

※RR(リスク比)が1を超えてる場合、介入により悪化しているようにもとれますが、「Triple-combination cream was significantly more effective at lightening melasma than hydroquinone alone」と記載されていますので、“3種混合のほうが有効”が正しいと思います。「肝斑の軽減」がアウトカムなのでリスク比が1より高いと有効と解釈しました。


ハイドロキノンメラニン合成酵素であるチロジナーゼを阻害、メラニン色素を破壊。
トレチノイン:レチノイド外用剤。表皮のターンオーバーを促進(にきび治療薬のアダパレンもレチノイド外用剤)
フルオシノロン:ステロイド。酒さ様皮膚炎を起こすことがあるので注意。

※海外で市販されているTriluma®の各薬剤の規格はハイドロキノン4%、トレチノイン0.05%、フルオシノロン0.01%


Evidence-based treatment for melasma: expert opinion and a review. - PubMed - NCBI
Dermatol Ther (Heidelb). 2014 Dec
こちらはフルテキストあり
table2に外用療法のエビデンスがまとまっています。
単剤ならハイドロキノンHQ4%製剤が有効性が高い印象です。

table8にはエビデンスレベルが記載されています

治療法 エビデンスレベル エビデンスの質
2%HQ II–ii C
4%HQ I B
0.1% tretinoin (RA) I B
0.05% RA I C
2%HQ + 0.05%RA + 0.01%フルオシノロン I A
4%HQ + 5%glycolic acid II–ii B
20%Azelaic acid I B
アダパレン II–ii B
ビタミンC溶液の塗布 II–i C

有効性が認められている3種混合クリームですが、ステロイド含有のため、適応については慎重に考慮する必要があると思います。
まずはハイドロキノンが妥当なところでしょうか。


さまざまな文献に目を通した上で考えをまとめてみます。

まずは、シミの鑑別を行う必要があります。
あきらかに肝斑が疑われる場合は、以下のとおり(シミの鑑別が不明な場合は皮膚科受診勧告)。

紫外線対策(特に夏に増悪するケースでは有用と思われる)
食事はビタミン不足に注意。りんごポリフェノールが有効である可能性があるので、りんごをすすめてみる。

ここまではまず害のない対策だと思います(サンスクリーンによる接触性皮膚炎の懸念くらいでしょうか)

ここから先はやはり皮膚科受診が良いかなと思いますが、受診希望しない場合は、トラネキサム酸の市販薬を試してみても良いかなと。製品メーカーの推奨どおり8週間試してみて、効果がなければ皮膚科受診勧告。
外用はハイドロキノンが第一選択的に用いられているようですが、皮膚科Drの指示のもと使ったほうがよいと思います。