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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

「生理痛がひどいんです」→どうする??

婦人科 鎮痛薬

若い女性患者さんの併用薬を確認するとき、生理のときに鎮痛薬を服用しているという方がしばしば見受けられます。
少し古いですが、2004年女性労働協会の調査によると、
16~50歳の女性において、
かなりひどい月経痛(服薬しても仕事を休む):2.8%
ひどい月経痛(服薬すれば仕事ができる):25.8%
(ともに加齢とともに減少傾向)
となっており、約30%の女性が薬を服用して生理痛を凌いでいることになります。

月経困難症
月経期間中に起こる随伴症状(下腹部痛、腰痛、腹部の張り、吐気、頭痛、疲労・脱力感、いらいら、下痢、憂鬱など)
機能性と器質性に大別

機能性 子宮内膜で産生されるPGによる子宮の過収縮が原因。思春期の場合、不安や緊張といった心理的要因の関与も示唆
器質性 子宮内膜症、PID(クラミジア感染など)、子宮筋腫など

器質性月経困難症をきたす代表的な疾患である子宮内膜症との違い

機能性 子宮内膜症
好発年齢 思春期~20代前半(初経後2~3年で発症) 20代後半~
加齢 軽快 悪化
痛みの時期 月経初日~2日目頃の出血が多いとき 持続長い。月経時以外にも生じることあり

※月経困難症と似ている疾患として、
月経前症候群PMS
月経3~10日前より、精神的or身体的症状(イライラ、のぼせ、お腹の張り、下腹部痛、腰痛、頭重感、易怒性、頭痛、乳房痛、落ち着きがない、憂鬱、手足のむくみ)が起こり月経とともに減弱あるいは消失する。
治療には、SSRI、LEP、NSAIDs、BZ系、漢方薬などを症状に応じて使用。


<月経困難症の月経痛の治療>
月経困難症でもっとも高頻度で起こる症状は下腹部痛です。
通院していなくても、市販の痛み止めを服用している方も多いのではないでしょうか。

①月経困難症の発生には子宮内膜で産生されるプロスタグランジンPGの関与が大きいのでPGの合成を阻害するNSAIDsが有効。
②NSAIDs効果不十分の場合には、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬LEP(ヤーズ、ルナベル)を用いる。LEPにより子宮内膜の増殖が抑制、その結果、経血量が減少し、経血排出のための子宮収縮が緩和
③子宮発育不全に伴う月経痛の場合にはブチルスコポラミン臭化物が有効(保険適応あり)。鎮痙作用により子宮平滑筋の収縮を抑制する。
漢方薬:当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸、桃核承気湯などの駆瘀血剤(血液のうっ滞を解消し、循環を改善)が用いられる。即効性はないが、4~12週で症状改善が期待できる。芍薬甘草湯は月経痛がひどいときに頓服で使用可
婦人科系漢方の使い分けはこちら
婦人科系漢方薬の使い分け - pharmacist's record



①に関連する文献を調べてみたいと思います。

Nonsteroidal anti-inflammatory drugs for dysmenorrhoea. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jul
機能性月経困難症に対するNSAIDs(vsプラセボアセトアミノフェン、他のNSAIDs)の効果を検討した80のRCT(n=5820)のメタ解析

痛みの軽減 有害事象
NSAIDs vs プラセボ OR4.37(95%CI 3.76 to 5.09; 35 RCTs, I2=53%,low quality evidence OR1.29(95%CI 1.11 to 1.51, 25 RCTs, I2 = 0%, low quality evidence
NSAIDs vs アセトアミノフェン OR1.89 (95%CI1.05 to 3.43, 3RCTs, I2=0%,low quality evidence) -
COX2選択的(セレコキシブなど)vs非選択的 優位性示せず。データ乏しい 優位性示せず。データ乏しい

どのNSAIDsがもっとも有効で安全かを評価するにはデータ不足


A double-blind, randomised, crossover study of two doses of a single-tablet combination of ibuprofen/paracetamol and placebo for primary dysmenorrh... - PubMed - NCBI
二重盲検ランダム化クロスオーバー単回投与試験
P:中等度~重度の月経困難症94名
E1:イブプロフェン200mg/アセトアミノフェン500mgを1錠
E2:イブプロフェン200mg/アセトアミノフェン500mgを2錠
C:プラセボ
O:有効性、忍容性
<結果>
投与6時間後の痛みの緩和
調整済み平均値(LS Means)
E1 2.1(p=0.0001)
E2 2.35(p=0.054)
プラセボ 1.85
有害事象は軽微でプラセボと差がない

1回量イブプロフェン400mg+アセトアミノフェン1000mgまで許容できるという結論
イギリスの試験ということで、日本人女性の体格に適応できるかはなんともいえないところです。
単回投与試験なので、長期連用したらどうかという点も不明。

イブプロフェンアセトアミノフェンを上乗せすることで効果が増すのかどうかを知りたかったのですが、そのような文献が見つけられませんでした。



Efficacy of a paracetamol and caffeine combination in the treatment of the key symptoms of primary dysmenorrhoea. - PubMed - NCBI
Curr Med Res Opin. 2007 Apr
中等度~重度の原発性月経困難症320名に対するアセトアミノフェンとカフェインの有効性を検討したプラセボ対照二重盲検クロスオーバー試験
<結果>
アセトアミノフェン1g+カフェイン130mg
vsアセトアミノフェン1g単独(p < 0.05)
vsカフェイン130mg単独(p < 0.01)
vsプラセボ(p < 0.01)
→カフェインは鎮痛補助薬として有効と結論

ということですが、カフェインは身体を冷やすので、一般的には生理痛に良くないとされています(身体の冷えによる血行不良は、子宮の筋肉が硬くなり生理痛を悪化)。
A risk-benefit assessment of paracetamol (acetaminophen) combined with caffeine. - PubMed - NCBI
この文献からも示唆されているように、カフェインにはアセトアミノフェンの鎮痛補助作用があり、相性が良いのかもしれませんが、生理痛の方にオススメするのはちょっと微妙な印象です。身体の冷えに注意すれば許容できるのかもしれません。


以下、鎮痛薬以外の介入についての文献をピックアップ

Effect of Achillea Millefolium on Relief of Primary Dysmenorrhea: A Double-Blind Randomized Clinical Trial. - PubMed - NCBI
J Pediatr Adolesc Gynecol. 2014 Dec
原発性(機能性)月経困難症に対するセイヨウノコギリソウの効果を検討したDB-RCT
被験者はイランの学生
セイヨウノコギリソウを2月経周期、3日間ティーバックで服用
痛みの重症度を視覚スコアで評価
プラセボに比べて、1ヵ月後(P = .001) 、2ヵ月後(P < .0001)

セイヨウノコギリソウなんてはじめて聞きました(最初、セイヨウオトギリソウと見間違えました…)。
被験者の数が記載されていなかったり、オッズ比などの記載がなく、どの程度有効なのか釈然としない感があります。二重盲検でプラセボを使用し、ティーバックで服用ということですが、本物と区別できないようなプラセボを作ることができたのでしょうか。


こちらもイランの研究です
The effect of ginger for relieving of primary dysmenorrhoea. - PubMed - NCBI
J Pak Med Assoc. 2013
原発性月経困難症にショウガのカプセルとプラセボを月経時3日間服用。
月経痛だけでなく吐気にも有効。

月経痛の緩和には腰や下腹部を暖めて血流を改善するのも有効とされていますので、ショウガで身体を温めるのが有効なのでしょうか。
うーん、本当に効くのかなと思っていたら、さらに文献が↓。

Effect of Zingiber officinale R. rhizomes (ginger) on pain relief in primary dysmenorrhea: a placebo randomized trial. - PubMed - NCBI
BMC Complement Altern Med. 2012 Jul
原発性月経困難症に対するショウガの効果を検討したRCT
P:中等度~重度の原発性月経困難症の120人の学生
E:ショウガの根の粉末500mg含有のカプセルを1日3回(1月経周期:月経2日前~月経開始3日間、2月経周期:月経開始3日間)n = 56
C:プラセボのカプセルn = 46
O:月経痛の重症度(VAS)
<結果>

ショウガ プラセボ
痛みの重症度 7.34→5.12→4.61 7.52→6.58→6.01
痛みの期間(hr) 19.38→14.7→10.88 19.06→21.36→15.57

シャヒード大学??こちらもイランでしょうか。
カプセルはショウガの臭いで識別できないようになっているようです。


ショウガの文献を検索したところメタ解析もありました。
Efficacy of Ginger for Alleviating the Symptoms of Primary Dysmenorrhea: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Clinical Trials. - PubMed - NCBI
Pain Med. 2015 Jul
原発性月経困難症に対するショウガとプラセボの効果を比較したRCTのメタ解析
選択基準を満たしたのは7つのRCT(うち6RCTは低~中等度のバイアスリスク、4つのRCTは月経開始3~4日ショウガorプラセボを服用)
<結果>
PVASスコア RR -1.85(95%CI -2.87 to -0.84 P = 0.0003)
750~2000mgのショウガ粉末の有効性が示唆されていると結論

メタ分析でも有効性が示唆。これは試してみる価値があるかもしれません。

↓さらに、薬との比較も。
The effect of mefenamic acid and ginger on pain relief in primary dysmenorrhea: a randomized clinical trial. - PubMed - NCBI
Arch Gynecol Obstet. 2015 Jun
中等度~重度の原発性月経困難症の女学生122名に対する、
メフェナム酸(250mgカプセルを1日3c)とショウガ(250mgカプセルを1日4c)を比較したRCT(アブストに盲検化の記載なし)
同程度に有効と結論。


Comparison of effects of ginger, mefenamic acid, and ibuprofen on pain in women with primary dysmenorrhea. - PubMed - NCBI
J Altern Complement Med. 2009 Feb
こちらはショウガvsイブプロフェン(400mg)vsメフェナム酸(250mg)
月経困難症の疼痛緩和にどれも有効で群間差は無し


身体が温まることで痛みが緩和しているのなら温熱療法(topical heat therapy)はどうかということでこちら
Continuous low-level topical heat in the treatment of dysmenorrhea. - PubMed - NCBI
Obstet Gynecol. 2001 Mar
ダブルダミー試験
イブプロフェン400mgを1日3回orプラセボを経口投与
加熱or非加熱の腹部パッチを貼付
<結果>
(加熱パッチ+プラセボ)や(非加熱パッチ+イブプロフェン)は、(非加熱パッチ+プラセボ)より有効。
顕著な疼痛緩和までの時間は、

加熱パッチ+イブプロフェン 中央値1.5時間
非加熱パッチ+イブプロフェン 中央値2.79時間

(強い痛みの緩和には有意差なし)

パッチによる局所温熱療法は経口イブプロフェンと同程度に有効と結論。

腹部加熱パッチとは、使い捨てカイロのようなものでしょうか。
直接下腹部~腰を温めるのは月経痛の緩和に有効かもしれません。



 生理痛に対するNSAIDsやアセトアミノフェンの効果の違いを調べたかったのですが、いまいち良い文献が見つからず、脱線して生姜(ショウガ)の文献ばかり漁ってしまいました。

表題に戻りますが「生理痛がひどいんです」と市販薬をお求めになられた患者さんに対してどう対応するか?
→市販の痛み止めを売って終了、ではちょっと足りないでしょうか…。

可能であれば、
まず、痛みの時期などを確認し、機能性かどうか検討。
痛みの持続が著しく長かったり、加齢とともに増悪するなど、器質性が疑われる場合は受診勧告。
月経前の不調であればPMSかもしれません。

典型的な機能性月経困難症であれば、月経痛の緩和としてNSAIDsの市販薬をおすすめ。
身体が冷えないようにして、食事はショウガを取り入れ、身体を温めるようにとアドバイス(←★)。
真冬だったらカイロも有効かもしれません。
鎮痛薬の効果がいまいちだった場合は、漢方薬など別の薬が著効することもあるので、一度、婦人科にかかってみることを提案。

自分だったらこんな感じで対応するかと思います。
文献等を調べた結果、少しは幅が広がったかなとも思いますが、まだまだ足りないですかね…。

当ブログを読むんでいただいた先生より料理で使う生ショウガは身体を温める作用はないのでは?というご指摘を頂きました。
メタ分析で有効と結論づけられていたのはショウガの粉末でした。蒸して乾燥させたショウガは乾姜と呼ばれ、身体を温めて冷えを改善する作用が生のショウガよりも強いようです。生理痛でお悩みの方には生ショウガではなく、粉末のショウガのほうが身体が温まるので有効かと思われます。
ご指摘頂いた先生、ありがとうございました!