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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

β遮断薬はCOPDを悪化させる?

β遮断薬とCOPD
β遮断薬は気管支攣縮の懸念がありますが、COPDを悪化させるでしょうか?

PubMedで文献を探してみました。

Use of cardioselective β-blockers in patients with chronic obstructive pulmonary disease: a meta-analysis of randomized, placebo-controlled, blinde... - PubMed - NCBI
J Int Med Res. 2012
COPD患者への心臓選択性β遮断薬の使用と肺機能の関連を調べた5つのDB-RCTのメタ解析

FEV1(1秒量)の減少
非選択的β遮断薬 0.14L
心臓選択的β遮断薬 0.03L

FEV1については、
COPDと前立腺肥大症の合併時のLAMAの使用について - pharmacist's record
FEV1の0.14L低下は、5歳の加齢と同じくらいの低下率。これをどう評価するか難しいところです。


Effect of β-blockers on cardiac and pulmonary events and death in older adults with cardiovascular disease and chronic obstructive pulmonary disease. - PubMed - NCBI
Med Care. 2014 Mar
COPDと心血管疾患CVDを併発している高齢者におけるβ遮断薬の効果と死亡率を検討したコホート研究のメタ解析
対象:65歳以上、CVD、COPD/喘息 計1062名
プライマリアウトカム:心イベント、肺イベント、全死亡

対象者1062名のうち約半数がβ遮断薬を服用
心イベント179名、肺イベント389名、死亡255名
β遮断薬のハザード比は

心イベント 1.18(95%CI 0.85-1.62)
肺イベント 0.91(95%CI 0.73-1.12)
死亡 0.87(95%CI 0.67-1.13)

どれも有意差なし。交絡因子もありそうですし、解釈が難しいです。
β遮断薬がCOPD患者の劇的に寿命を縮めてしまうようなことはなさそうだなという印象。


Beta-blocker use and COPD mortality: a systematic review and meta-analysis. - PubMed - NCBI
BMC Pulm Med. 2012 Sep
β遮断薬の使用とCOPD死の関連を調べたシステマテックレビュー
9つの後ろ向きコホート研究を解析
β遮断薬による、COPD死の相対リスク 0.69 (95% CI0.62-0.78)

こちらも交絡因子がありそうですが、もしかしたらむしろ有益かもしれないという結果でした。


Cardioselective beta-blockers for chronic obstructive pulmonary disease. - PubMed - NCBI
Cochrane Database Syst Rev. 2002
COPD患者への心臓選択性β遮断薬の影響を検討したDB-RCTを解析したコクランレビュー
FEV1や呼吸器症状に統計的有意差なし(2日間~12週間)
この結果は短期間でのデータなので、より長期の使用では注意深くモニタリングする必要ありと結語


Beta-blockers reduced the risk of mortality and exacerbation in patients with COPD: a meta-analysis of observational studies. - PubMed - NCBI
PLoS One. 2014 Nov
β遮断薬とCOPDの死亡と増悪を検討したコホート研究のメタ解析
観察期間は1~7.2年
β遮断薬の相対リスクRR

全死亡 RR0.72 (0.63 to 0.83)
COPDの増悪 RR0.63 (0.57 to 0.71)
全死亡(冠動脈疾患併発群) RR0.64 (0.54-0.76)
全死亡(心不全併発群) RR0.74 (0.58-0.93)

こちらも有用性を示唆する結果


Effect of beta blockers in treatment of chronic obstructive pulmonary disease: a retrospective cohort study. - PubMed - NCBI
BMJ. 2011 May
後ろ向きコホート研究。対象は50歳以上のCOPD患者5977名
フォローアップ4.35年
β遮断薬により全死亡22%減少
結論として、肺機能に悪影響を及ぼすことなく死亡率やCOPD増悪を減少。


Impact of β-blocker selectivity on long-term outcomes in congestive heart failure patients with chronic obstructive pulmonary disease. - PubMed - NCBI
Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2015 Mar
β遮断薬の長期予後を検討したレトロスペクティブ非ランダム化試験
P:COPDを合併したうっ血性心不全CHF患者
E:β遮断薬投与(カルベジロール52名、ビソプロロール34名)
C:β遮断薬投与なし46名
O:プライマリは全死亡、セカンダリはCOPDの増悪・入院
33.9ヶ月フォローアップ
全死亡 HR0.41(95%CI 0.17-0.99 P=0.047)
CHF/COPDの増悪の累積率はビソプロロール17.6%、カルベジロール55.8%(Figure3参照)
死亡率は、ビソプロロール8.8%、カルベジロール11.5%

結論としてCOPDを有するCHF患者へのβ遮断薬投与を推奨、重要なのはカルベジロールよりビソプロロールのほうがCOPDの増悪を減少させる。ということでビソプロロール推しですが、COIはないと明記されています。
table1によると、カルベジロール群、ビソプロロール群で年齢や性別、BMI、血圧、BNP値などはほぼ同等。

カルベジロール ビソプロロール
EF%(心駆出率) 38.2±15.1 54.3±16.5
FEV1 1.7±1.56 1.52±0.58
RA系服用率 80.6% 60%
吸入チオトロピウム使用率 29.7% 42.1%

微妙に違いはありますが、結果に影響するものなのかどうか…
決着をつけるなら盲検化してRCTをやらないと駄目ですね。


いろいろ調べてみましたが、β遮断薬とくに心臓選択性の薬はCOPD患者の呼吸機能に悪影響はなく、むしろ有益性が示唆されているようです。