pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

喘息発作時の対応(SABA,経口ステロイドのレスキュー)

 気管支喘息の有病率は3~5%、国内で400~500万人ということで、かなり高頻度の疾患でありながら、その危険性をきちんと理解されていないケースも多く、近年でも年間2000人程度の患者さんが亡くなっています(吸入ステロイドの普及もあり、2000年以降、減少傾向)。

 

喘息発作時の治療(ステップ1~ステップ4)

<ステップ1>

小発作。苦しいが横になれる。PEF80%以上、SpO2 96%以上

自宅治療:SABA吸入(1~2パフ(各薬剤の添付文書参考)を吸入し、効果が不十分であれば1時間まで20分おきに吸入を繰り返し、以後は1時間に1回を目安に吸入する。その際、β2刺激薬またはテオフィリン薬(アミノフィリン)の経口を併用してもよい。

PEF予測値または自己最高値の80%以上となり症状が消失、また薬剤の効果が3~4時間持続する場合はそのまま自宅治療。

★症状が持続(気管支拡張薬で3時間以内に症状が改善しない)、症状が悪化傾向、SABA吸入を1~2時間おきに必要、中等度以上の発作→→プレドニゾロン錠(15~30mg)を内服し、救急受診

 

<ステップ2>

中等度の発作。苦しくて横になれない。動作困難、かろうじて歩ける。PEF60%~80%、SpO2 91%~95%。

自宅治療ではなく、救急受診。

β2刺激薬ネブライザーステロイド点滴、酸素投与、アドレナリン皮下注、抗コリン吸入など

 (ステップ3、4は省略します)

 

ガイドライン2012ではこのように定められています。

 患者さんにとっては救急受診のタイミングがわかりにくいような気もします。軽い発作なのか、中等度の発作なのか、患者本人が自覚できるものなのでしょうか。苦しい時にピークフローを測定する余裕もないでしょうし…。

 岐阜県では、SABA2吸入→改善しなければ20分後に2吸入→改善しなければ病院受診を推奨(岐阜県喘息対策実施事業連絡協議会より配布の喘息患者カードより)

 

 喘息発作をしばしば繰り返している患者さんの場合は、事前にレスキュー用として経口ステロイドを処方するケースがあります(経口投与の効果は、点滴と大差はない)。経口ステロイドのレスキューの用量については確立されたエビデンスはないようですが、救急受診前に内服する推奨量はプレドニゾロン15~30mgということで、レスキューでの処方量もこの程度で使用するケースが多いようです。

 長期管理においては経口ステロイドの連用はなるべく回避、増悪時はプレドニゾロン0.5mg/kg/日(7日間以内)の短期投与(連用が必要な場合は、なるべく最小量(プレドニゾロン5mg程度)で1日1回もしくは隔日投与)とガイドラインに記載されており、レスキュー用として処方する場合は、この程度の用量で7日以内の短期日数が望ましいかと思います。(投与中止の離脱症状については、0.5mg/kg/日で2週間以内なら心配ないというエキスパートオピニオンあり)

 

 経口ステロイドやSABAは副作用の観点から必要とされるときのみの使用とし、長期管理は吸入ステロイドICSが第一選択です。 ただ、効果が出ているという実感がないため、ICSのコンプライアンスが悪くなるケースが多いように思います。長期管理においてICSと併用で用いられるLABAもICS無しの単独での使用は予後不良というデータもあり、ICSの使用は必須と言えます。

The Salmeterol Multicenter Asthma Research Trial: a comparison of usual pharmacotherapy for asthma or usual pharmacotherapy plus salmeterol. - PubMed - NCBI

Chest. 2006 Jan

喘息患者26,355名を対象としたサルメテロール吸入(セレベント)とプラセボを比較したDB-RCTですが、黒人を中心に喘息死が多かったため途中で打ち切られました。

プライマリアウトカムは呼吸関連死と生命を脅かす体験で、サルメテロールvsプラセボ (50 vs 36; relative risk [RR] = 1.40; 95%CI, 0.91 to 2.14).

喘息関連死asthma-related deaths (13 vs 3; RR, 4.37; 95% CI, 1.25 to 15.34)

イベントのあった患者の多くがICSを使用していなかったことから、ICSの使用無しにLABAを用いることは推奨されなくなりました。

 

 喘息死を防ぐには、きちんと定期的に受診しているコンプライアンス良好な患者さんへの介入というよりは、調子が悪い時にしか病院に来ない患者さんへの教育が重要だと思います。処方されたICSは使わずに、調子が悪いときだけSABAを使用しているような方が一番心配です。喘息死は必ずしも重症例でのみ起こるわけではなく、軽症~中等度でも起こりうということを、喘息患者さんに認識して頂いて、かつ、適切な治療を受ければ、ほぼコントロールできるということを説明することが治療の第一歩だと思います。

 

参考文献:JGL2012