pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

失神とてんかんによる意識消失の見分け方は?

失神(Syncope:シンコピー)
大脳皮質全体もしくは脳幹の急な血流低下により起こる一過性の意識消失。
一般的な定義は、①短時間の一過性の意識消失 ②四肢筋の脱力を伴う ③自然に意識が回復
(一過性意識消失発作は、[失神]+[てんかんによる意識消失]。てんかんによる意識消失は失神ではない)

欠神発作との違い:数十秒間意識を失うが、姿勢維持筋緊張は保たれるので倒れたりはしない(失神は姿勢維持筋緊張の消失を伴うので倒れてしまう)。姿勢が保たれていれば失神したという主訴で受診することはまずないので失神と欠神発作の鑑別は容易と思われる。

痙攣との違い:失禁や便失禁を起こすことがあるが、失神では稀。意識消失はどちらも突然起こるが、失神は意識の回復はすみやかなのに対し、痙攣ではしばしば遅延する。


失神とてんかんの鑑別
Historical criteria that distinguish syncope from seizures. - PubMed - NCBI
J Am Coll Cardiol. 2002 Jul

症状・身体所見 感度 特異度 LR+
Cut tongue 舌を噛む 45.1% 97.3% 16.5
Head turning 頭部回旋(後ろを振り向くような動き) 43.1% 96.8% 13.5
Unusual posturing 異常な姿勢 35.3% 97.3% 12.9
Bedwetting 失禁 23.5% 96.4% 6.4
Limb jerking noted by others 四肢痙攣 68.6% 87.7% 5.6
Prodromal trembling 振戦の前駆症状 29.4% 94.1% 5.0
Behaviors not recalled 発作時の行動を覚えていない 52.9% 86.8% 4.0
Loss of consciousness associated with stress ストレスに関連した意識消失 56.9% 84.9% 3.7
Muscle pain 筋肉痛 15.7% 95.4% 3.4
Prodromal deja vu デジャブの前駆症状 13.7% 95.9% 3.3
Postictal confusion 発作後の意識障害 94.1% 69% 3.0
Postictal headaches 発作後の頭痛 49% 83.6% 3.0

LR+が1を下回る所見として、めまい・発汗・動悸などの前駆症状、座位・立位での失神感、意識消失時の記憶あり、などがある。

criteria スコア
舌を噛んで目が覚める 2
異常行動の目撃 1
感情的ストレスによる意識消失 1
発作後の意識障害 1
頭部回旋(後ろを振り向くような動き) 1
デジャブやジャメビュの前駆症状 1
前失神 -2
長時間の座位や立位による意識消失 -2
発作前の発汗 -2

※ジャメビュ:知っていることを初めてのことのように感じる
スコア1点を境目に感度特異度ともに94%程度(原著のFigure 1.参照)

さまざまなデータがありますが、上記スコアリングが鑑別に有用な所見となりますので、このような病歴と聴取すると良いのではないかと思います。
意識消失が数分以上と長引いたり、意識が戻っても混迷した状態が続く場合は失神よりてんかんの可能性が高くなります。失神はいわば電源のオンオフなので回復も速やかなのが特徴です。ただし、起立性低血圧などで失神し、臥位にせずに立位・座位で保つと脳血流の回復が遅れて、意識障害が続いたり痙攣を起こすこともあるようです。失神は脳虚血によるものなので、無理に身体を起こそうとはせず、身体を寝かせてあげて血液を脳に行き渡らせてあげることが大事です。