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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

更年期障害の指標は? ホルモン補充療法HRTについて

婦人科

更年期障害

閉経(45~55歳程度)に伴うエストロゲン低下を主因とする症状

①血管運動神経症状:顔の火照り・のぼせ(ホットフラッシュ)、異常発汗、動悸、めまい、冷え
②精神神経症状:情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安感、不眠、頭重感など
③その他:腰痛、関節痛、食欲不振、皮膚乾燥、かゆみ、頻尿、陰部違和感など


簡略更年期指数(SMI)

症状 点数
顔がほてる 10 6 3 0
汗をかきやすい 10 6 3 0
腰や手足が冷えやすい 14 9 5 0
息切れ・動悸がする 12 8 4 0
寝つきが悪い、眠りが浅い 14 9 5 0
怒りやすく、すぐイライラする 12 8 4 0
くよくよしたり、憂鬱になることがある 7 5 3 0
頭痛、めまい、吐気がよくある 7 5 3 0
疲れやすい 7 4 2 0
肩こり、腰痛、手足の痛みがある 7 5 3 0

50点以上で更年期外来の受診推奨。

点数の高い項目ほど、更年期障害の症状として特異度が高い症状であると考えられます。
The Australian Longitudinal Study on Women’s Healthでは、閉経に伴って生じる症状のオッズ比はホットフラッシュが8.6、寝汗が5.5と特異度が高く、肩こり、関節痛、不眠は2以下と特異度が低いようです。


血管運動神経症状が強くエストロゲン低下が明らかな場合は、ホルモン補充療法HRTの有効性が高いとされています。

ホルモン補充療法HRT
有用性高:ホットフラッシュ・発汗・ほてりなどの血管運動症状、萎縮性膣炎・性交痛の治療、骨粗しょう症予防。
不眠・抑うつ・関節痛・四肢痛・頻尿・膣乾燥などの更年期症状にも有効。
その他、脂質異常症の改善、皮膚萎縮の予防が期待される。

投与開始時期は、60歳未満または閉経年数10年未満
※WHI試験では、心筋梗塞脳卒中、肺塞栓、乳がんのリスクが増加。WHI試験は対象平均年齢が64歳。冠動脈疾患や肺塞栓は高齢であるほどリスクが高まることが示唆。高齢での新規導入は推奨されていない。


子宮あり:エストロゲン・プロゲスチン併用
子宮摘出後:エストロゲン単独

※子宮がある場合、子宮内膜増殖(子宮内膜がん)予防のためプロゲスチンを併用する。

エストロゲン・プロゲスチン持続的併用投与:ともに連日投与。プロゲスチン持続投与による子宮内膜萎縮にて無月経とする療法だが、開始後、微量出血(spotting)を含めると約9割に不定期な不正性器出血がみられる。時間の経過とともに、出血は徐々になくなっていく(施行後6ヶ月で50%、1年で10%程度)。月経のような出血を望まない人、閉経から数年経っている人に適している。

エストロゲン持続的投与:子宮摘出した人に適用。

エストロゲン・プロゲスチン周期的投与:1ヶ月サイクルでエストロゲン約3週連日投与し、3~7日休薬。プロゲスチンをエストロゲン連日投与の後半に10~12日間併用。プロゲスチン服用終了2~3日後に月経のような出血あり。定期的に月経様の消退出血がおこるため出血への対処がしやすい。閉経して間もない人に適している。

エストロゲン連日投与・プロゲスチン周期的投与:③のエストロゲン休薬期に更年期症状が出る場合に適用。プロゲスチンは12~14日間服用し、服用終了後2~3日後に出血あり。

エストロゲンプレマリン、エストラーナテープ、エストリールなど
プロゲスチン:プロベラ、ヒスロンなど
エストロゲン・プロゲスチン配合剤:メノエイドコンビパッチなど

プロゲスチンの用量
プロベラ:周期的投与では5~10mg、持続的投与では2.5mg(子宮内膜保護かつ脂質代謝に影響を与えない用量)

エストロゲン製剤の剤形の違い。

経口 経皮
メリット LDL低下、HDL増加、骨密度増加 乳がんリスクが少ない、静脈血栓症が少ない、冠動脈リスクが少ない、血中濃度一定、肝代謝への影響が少なく胆嚢疾患が少ない、TG低下
デメリット TG増加、乳がん・心血管系への影響 LDL・HDLの改善はみられない、貼付部位のかぶれ、はがれやすい、経口プロゲスチンとの併用が猥雑

腟乾燥感や性交痛などの萎縮性腟炎のみの場合はエストリール製剤の腟錠のみを投与


HRTの副作用(マイナートラブル)
乳房痛、乳房緊満感:徐々に軽快することが多い。
性器出血:持続併用投与による不正性器出血と周期的投与による消退出血。
吐気(特に内服):エストロゲンでもプロゲスチンでも起こりうる。
かゆみ・紅斑などの皮膚局所症状(貼付剤):約30%で起こる。→毎回貼る部位を変える

HRTによるリスク
乳がん:HRTガイドライン2012では5年以内の治療であればリスクの上昇はないとされている。治療期間が長くなるとともにリスクは上昇するが、中止によりリスクは消失する
静脈血栓塞栓症VTE:経口エストロゲンの量との関連が示唆されている。WHI試験の年齢別解析にて年齢によるリスクも示唆されており、50~59歳のプラセボ群と比べたHRTのハザード比は、50~59歳で2.27、60~69歳で4.28、70歳以上で7.46
虚血性脳卒中:年齢にかかわらずリスク上昇とされている。出血性脳卒中のリスク増加は認められていない
冠動脈疾患:WHI試験で心筋梗塞のリスク増加がみられたが、閉経後10年以内を対象としたサブ解析ではリスク増加はないことから、閉経後早期の健康女性であればリスク増加はないとされている


HRTの禁忌と慎重投与

禁忌 重度の活動性肝疾患、乳がん(既往も含む)、現在の子宮内膜がん、原因不明の不正出血、妊娠疑い、急性血栓性静脈炎、血栓塞栓症(既往も含む)、冠動脈疾患の既往、脳卒中の既往
慎重投与 、子宮内膜がんの既往、卵巣がんの既往者、肥満、60歳以上の新規投与、血栓症のリスクを有する症例、慢性肝疾患、胆嚢炎および胆石症の既往、重症の家族性高TG血症、コントロール不良な糖尿病、コントロール不良な高血圧、子宮筋腫子宮内膜症・子宮腺筋症の既往、片頭痛てんかん、急性ポルフィリン血症


精神症状だけが強い場合はSSRISNRIも選択肢の一つとなる。
多彩な症状を訴える場合は漢方を考慮
婦人科系漢方薬の使い分け - pharmacist's record


更年期障害のホルモン補充療法についてはさまざまなリスクとベネフィットを考慮する必要がありますので専門医に見てもらうのが良いのではないでしょうか。症状が重くなければ、まずは漢方を試してみるというのも一考かと思います。

参考
HRTガイドライン2012
産婦人科診療ガイドライン