pharmacist's record

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伝染性紅斑(りんご病) (小児疾患シリーズ)

伝染性紅斑(りんご病

ヒトパルボウイルスB19による感染症。潜伏期は4〜21日。
感染経路は飛沫感染(風邪やインフルエンザと同じくマスク着用・手洗いは有効)。潜伏期や先行する風邪症状が出ているときに感染力があり、発疹が出始める頃には感染力は弱い。
好発年齢は5~10歳。一度かかると、終生免疫を獲得。イギリスの報告によると75%以上が、ヒトパルボウイルスB19の抗体を持っている。
学校保健法上は、出席停止扱いの疾患には含まれていない
 
症状:7~10日くらい前に、微熱、咳、鼻水などの軽い風邪症状が先行し、両頬に蝶形状の紅斑(鼻根部を跨がない)が出現し、続いて上腕と大腿部、臀部、腹部などに網目状の紅斑が出る。紅斑は1週間程度持続。痒みや関節痛を伴うことがある。
※成人の場合:小児に比べて、関節痛が強く、紅斑は軽度(特に頬の紅斑は少ない)。 
上記スタディによると、成人の感染では無症状のケースもある模様。
発熱(81%)、関節痛・筋肉痛(61.9%)、皮疹(47.6%)、倦怠感(42.9%)、リンパ節腫脹(38.1%)、浮腫(38.1%)
 
日光、入浴、暖房で赤みが増す。
入浴で温まると発疹部の痒みが増すことがあるので高温は避けたほうが良い(お風呂の湯を通じての感染はほとんどない)。
日光で紅斑が再出現することあるので、一週間程度は天気のよい日の長時間の外遊びはさけたほうがよい。
 
<治療>
基本、治療不要
対症療法として抗ヒスタミン薬(かゆみに)、アセトアミノフェン(関節痛に)など
成人の場合、関節痛にNSAIDsも可
 
りんご病と胎児水腫>
妊婦の罹患により流産や胎児水腫を起こすことがある(とくに妊娠12~28週)
ヒトパルボウイルスB19は赤血球に感染する。胎児が感染すると赤血球が減少し、胎児貧血を起こし、貧血が進むとむくみがひどくなり、胎児水腫となる。
感染妊婦の約4割が胎児感染、胎児水腫を合併するのは感染妊婦の約2~10%。
産婦人科ガイドラインによると、感染妊婦の3.9%に胎児水腫発生、妊娠32週未満(4.4%)、32週以降(0.8%)。子宮内胎児死亡は妊娠20週未満の感染例で多い。とのデータあり。
 
 りんご病の問題点は、妊婦さんへの感染です。感染力の強い紅斑出現前には、りんご病の確定診断は困難なため、感染予防が難しい病気です。紅斑や関節痛が出た後は感染力はほとんどなくなりますが、りんご病と診断されたお子さんの周囲の人もまたりんご病の潜伏期に入っているという可能性もあるため、妊婦さんはなるべく接触を避けたほうが良いと思います。
 りんご病のお子さんと接触した妊婦さんが風邪症状や関節痛などが出現し、りんご病が疑われたら抗体検査が勧められます。
 
参考文献