ビスホスホネート製剤は骨粗しょう症の第一選択薬として知られています。薬理作用は、骨吸収の抑制で、骨を強くする働きがあります。血中濃度が低下しても、骨に沈着し有効性を発揮するため、週1回製剤や月1回製剤が開発され、臨床で用いられています。
いろいろと注意点がある薬ですが、副作用について取り上げます。
<顎骨壊死>
がんの骨転移について - pharmacist's record
↑こちらでとりあげているのでご参照ください。
<非定型大腿骨骨折>
ビスホスホネート製剤の長期使用と非定型大腿骨骨折の関連性が示唆されており、H22年に添付文書の使用上の注意改訂にて追加記載となっています。
特徴は、大腿骨転子下(股関節直下)~近位骨幹部に起こる非外傷性の横断型骨折。
骨折の数週間~数ヶ月前より前駆症状として、股関節・大腿部の痛みあり。X線検査にて、骨の肥厚といった特徴的な画像所見がみられるため、前駆症状が見られたら、適切な処置が必要。
非定型骨折は両側性に起こりやすいため、非定型骨折がみられたら、他方の大腿骨の画像検査も必要。ビスホスホネートは中止し、別の骨粗しょう症治療薬への変更を検討。
Increasing occurrence of atypical femoral fractures associated with... - PubMed - NCBI
Arch Intern Med. 2012 Jun
1999年~2010年 50歳以上の477名の大腿骨転子下または大腿骨骨幹部骨折で入院した患者と、大腿骨骨折のない200名のランダムなサンプル患者を対照群とし、ビスホスホネート(BP)製剤の投与の有無とそのリスクを解析。
定型骨折が438名(BP投与28名 6.4%)、非定型骨折が39名(BP投与32名 82.1%)、骨折の無い群(BP投与11%)。
定型骨折リスクがBP投与により、47%減少(OR0.5 ; 95% CI, 0.3-0.9).
非定型骨折リスクは、
- BP2年未満投与:OR35.1 (10.0-123.6)
- BP2年~5年投与:OR46.9 (14.2-154.4)
- BP5年~9年投与:OR117.1 (34.2-401.7)
- BP9年以上投与:OR175.7 (30.0-1027.6)
反対側の大腿骨骨折は、非定型では28%と高頻度だが、定型骨折では0.9%
非定型骨折の発生率は年あたり100万人中32名
BP製剤の長期投与が非定型骨折に関連しているのは間違いようですが、定型骨折のリスクを減少させるメリットのほうが大きいということで、骨粗しょう症の第一選択薬として用いられています。ただし、股関節の痛みなどの前駆症状がでたら画像検査を行い、非定型骨折の徴候がみられたら別の薬に変更するといった適切な対応が求められます。