pharmacist's record

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アセトアミノフェンについて(500mg製剤発売)

 500mg錠が発売となったアセトアミノフェンについて取り上げたいと思います。

 アセトアミノフェンはインフルエンザの解熱にも用いられるとても有用な薬です。小児の解熱にも用いられ(出生3ヶ月未満は安全性未確立)、NSAIDsと比べ安全性が高い薬といわれています。

 

アセトアミノフェン

作用機序:中枢のCOX-2を阻害し、解熱鎮痛作用を示す。末梢のCOXへの作用は弱く、抗炎症作用はほとんどない。作用機序については不明な点が多く、下行性疼痛抑制系のセロトニンを賦活、カンナビノイド受容体、カプサイシン受容体を介した鎮痛作用などの説がある。

 

効能効果と用法用量

  • 各種鎮痛に対しては1回300~1000mg 投与間隔4~6時間 1日総量4000mgまで(警告:1日1.5gを超える長期投与では定期的に肝機能検査を実施)
  • 急性上気道炎の解熱鎮痛に対しては1回300~500mg 原則1日2回、1日最大1500mgまで

※天井効果があり、1回1000mg以上投与しても効果は増強しないといわれている

NSAIDsとの併用で相加効果の可能性が指摘されている。

 

アセトアミノフェンの副作用〉

胃障害:NSAIDsに比べ、COX阻害作用が弱いため、消化性潰瘍のリスクは少ないとされている。⇒胃にやさしい解熱鎮痛薬は? - pharmacist's record

肝障害:後述のNAPQIによる

腎障害:腎障害患者に対する鎮痛薬としては、NSAIDsに比較してアセトアミノフェンは安全ではないかと理論的にまた経験的に評価されているが、CKDガイドライン2013では安全性が確立できるエビデンスはないとされている。腎障害があるとRAA系亢進、交感神経により腎の血管が収縮し、代償的に分泌されるPGが腎血管を拡張するが、NSAIDsはこれを阻害するので問題となる。NSAIDsによる腎障害の機序は、PG産生低下による腎血流低下や、アレルギーを介した間質性腎炎など多岐にわたる。アセトアミノフェンは末梢でのPG合成阻害作用は弱いが、後述のNAPQIにより尿細管細胞障害が発生するという説もある。
米国老年医学会はCKD患者や高齢者の疼痛に対する鎮痛薬としてアセトアミノフェンを推奨している。

 

アセトアミノフェンの吸収と代謝〉

アセトアミノフェンは、ほぼ100%吸収され、30~60分で最高血中濃度に達する。空腹時のほうが効果発現は早い。半減期は2時間程度。

大部分(約90%)が肝臓でグルクロン酸抱合・硫酸抱合で代謝。一部がチロクロームP450、主にCYP2E1により、N-アセチルpベンゾキノンイミン(NAPQI)となる。NAPQIは肝臓でグルタチオン抱合で代謝され尿中排泄。

この代謝の過程で生じるNAPQIが肝細胞を障害する。アセトアミノフェンによる肝障害のリスク因子として以下があげられる。

  • アセトアミノフェン大量投与⇒グルクロン酸抱合や硫酸抱合の処理が追いつかず、CYP代謝によるNAPQIが増える(1回投与量150~250mg/kgで肝毒性を引き起こすという報告あり)
  • アルコール⇒CYP2E1誘導とグルタチオン低下によりNAPQIが増える。
  • 絶食状態や栄養不良⇒グルタチオン低下
  • カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、イソニアジドなど⇒CYP2E1誘導

 

〈腎機能低下例への投与〉

 アセトアミノフェンは大部分は肝臓で代謝されるが、グルクロン酸抱合体・硫酸抱合体の尿中排泄が低下し、胆汁排泄されることで、腸内細菌で脱抱合⇒アセトアミノフェンが再吸収⇒アセトアミノフェン半減期が遅延し、血中トラフ値が健常者よりも上昇することがある。

 アセトアミノフェンの腎機能低下時の投与間隔

  • GFR50以上:4時間おき
  • GFR10~50:6時間おき
  • GFR10以下:8時間おき

参考)Paracetamol: new vistas of an old drug. - PubMed - NCBI

フルテキストのPharmacokineticsの項目

 

 アセトアミノフェンは汎用薬でありながら、いまだに機序不明な点もあったりと奥が深い薬です。鎮痛薬としての使用では1日4gまで適応拡大になった一方で、アセトアミノフェン製剤とアセトアミノフェンを含む他の薬剤(一般用医薬品を含む)との併用は過量投与の観点から避けるといった警告が記載されており、米国ではFDAアセトアミノフェン配合剤の含有量を325mgまでとする勧告もありました。

各種アセトアミノフェン製剤の含有量は、

その他、ノーシン、パブロン、ルルなどの総合感冒薬のシリーズ品の一部にアセトアミノフェンが含有されていますが(含有無しの製品もある)、概ね1回服用量中300mgのものが多いようです。1日3回の服用で900mgとなります。

 医療用の500mg製剤発売で、今後、高用量投与のケースが増えてくると、OTC薬の併用によりうっかり過量になっているということもありえるため注意が必要です。