pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

ヒートショック(入浴時の血圧変化)

ヒートショック

急激な温度変化により、身体に及ぼす影響(血圧変動など)のこと。

 

東京都健康長寿医療センターによると、入浴中の死亡は推定年間1万人を超えるといわれています。

主に寒い時期の入浴時のヒートショックが問題となることが多いと思われます。高齢者や高血圧、脂質異常症など動脈硬化を患っている方は要注意です。

 

冬の入浴と血圧変化

①脱衣⇒暖かいリビングから寒い脱衣所にて裸になると身体が冷えて、熱を逃がさないようにと血管が収縮し血圧上昇。

②お湯に浸かった直後⇒冷めた身体がお湯の熱さによって、神経が刺激されて血圧上昇

③お湯に浸かる⇒熱さに慣れて、身体が温まってくると、血管が拡張し血圧低下。また胸に水圧がかかることにより、心臓が圧迫され、心臓の拡張が阻害され、心臓に入ってくる血液が減り、心臓から送り出す血液も減って血圧が低下。

①~③の過程で、心筋梗塞脳卒中、失神(脳虚血)を起こす恐れあり。

 

〈入浴時のヒートショック対策〉

  • 浴室や脱衣所を温める:脱衣所をストーブなどで温める。あるいは、蛇口からではなくシャワー(高い位置から)で浴槽にお湯を溜めることで浴室を温めることができる(浴室の扉を開けておくことで脱衣所も温めることができる)。
  • かけ湯をして少しずつ身体を温める(手足から身体の中心部へ)。
  • 首までお湯に浸からない半身浴。身体が温まらないようなら、温度に慣れてから深く浸かったほうがよい。
  • 熱いお湯は避ける:お湯の温度が高い方が血圧の変動が大きくなる。JSHガイドライン2014では室温20℃以上,湯温40℃以下では血圧が上昇しにくいとされている。熱いお湯を好む場合は、熱さに慣れてから追い焚きをしたほうが変動が少ない。
  • 水分補給:入浴により発汗し、水分が失われるため、脱水予防として入浴前に水分補給しておくことで、脱水による血液濃縮+血圧低下⇒脳梗塞リスクを防ぐ。また脱水時は起立性低血圧を起こしやすく失神のリスクとなる。
  • 飲酒後の入浴は避ける:飲酒による利尿作用にて脱水をきたしやすい。

 血圧変化をなるべく最小限に抑えるために急激な温度変化を防ぐことと、脱水をおこさないことがポイントとなります。

 入浴中の失神は溺死に繋がる恐れもあります。脳虚血による失神は、「目の前に黒いスクリーンが降りてくるような感じ」と表現されることもありますのでそのような前駆症状があったら、慌てて立ち上がったりしないほうが良いです。急に立ち上がると起立性低血圧を起こしやすくなってしまい、失神のリスクを高めてしまうことになります。

 寒い日に熱いお湯に深々と浸かるのはとても心地よく、心身ともにリラックスできるかもしれませんが、高血圧を患っている方や心臓が悪い方は、シャワーでお湯を溜めて浴室を温めたり、かけ湯をするなどして、急な温度変化は避けるようにしたほうがよいと思います。