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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

浮腫(むくみ)のメカニズム

浮腫

浮腫とは、血管外の細胞外液が間質(組織の隙間)に貯留し皮膚が腫脹する状態(サードスペースに水分がたまる)

 

〈浮腫のメカニズム〉

大きく3つに分類

[Starlingの法則]

血管の静水圧と浸透圧の関係

動脈側:静水圧>浸透圧 血管内から血管外への力が強いので水が血管外へ。 

静脈側:静水圧<浸透圧 血管外から血管内への力が強いので水が血管内へ。

通常は、動脈側と静脈側の水分移動のバランスが均衡であり浮腫は起こらない。

どうなると血管内から血管外へ水分が移動するか?

①血管静水圧の上昇(毛細血管内圧の上昇、静脈のうっ滞、血管抵抗上昇など)

⇒局所的な深部静脈血栓症DVT、全身性の心不全、腎不全など

②浸透圧低下(血中アルブミンの低下など)

ネフローゼ症候群、肝硬変、低栄養など

 ③ 血管透過性の亢進

感染症やアレルギーによる血管透過性の亢進により、間質に水分が漏れる

蜂窩織炎などの炎症性疾患

 

 〈浮腫の分布〉

局所性(片側性):局所に病変がある。リンパ管閉塞によるリンパ浮腫や、DVTなどの静脈の閉塞、局所の炎症など

全身性:重力の影響を受け、体の低い部位から起こるのが一般的。座位や立位では下腿に現れやすいが、寝たきりの場合は、仙骨部や背部に現れる。心不全、腎不全、肝硬変、甲状腺機能低下症など

 

〈浮腫の状態〉

圧痕の有無 pittingかnon-pittingか

浮腫を15秒ほど指で圧迫し、指を話したあとの凹みを確認。視診だけでなく指先で凹凸があるか撫でて確認する。眼瞼浮腫の場合は、つまんで皺を作り、皺が消えないことを確認。

[non-pitting edema(非圧痕浮腫)]

圧痕が残らず速やかに回復。

甲状腺機能低下症(水分とムコ多糖のバランスによりpittingのこともある)、リンパ浮腫、蜂窩織炎など

甲状腺機能低下症では上半身に浮腫がみられたり、眼瞼浮腫を起こすことあり。

甲状腺機能亢進症でも粘液水腫をきたすことあり。

[pitthing edema(圧痕浮腫)]

圧痕の回復時間が40秒を超えるかどうかで2つに分類。

 

 〈浮腫の鑑別〉

全身性

  • pitting⇒尿タンパク陽性⇒腎不全?ネフローゼ?⇒Alb,Cr,BUNなどのチェック
  • pitting⇒尿タンパク陰性⇒肝硬変?心不全?薬剤性?月経前浮腫?栄養障害?⇒胸部X線、心エコー、血清Alb、肝機能、薬剤服用歴の確認
  • non-pitting⇒甲状腺機能低下or亢進症?⇒TSH、FT4測定

局所性

  • pitting⇒静脈怒張⇒DVT?上大静脈(SVC)症候群?⇒Dダイマー、CT、エコーなど
  • pitting⇒発赤、圧痛、熱感⇒炎症?⇒CRPWBCなど
  • non-pitting⇒リンパ浮腫?⇒手術歴(リンパ切除)、放射線照射治療歴の確認

 

〈薬剤性浮腫〉

  • NSAIDs⇒腎血流低下によりNa貯留、抗利尿ホルモンADHに対する拮抗作用減少(作用増強)による水の再吸収亢進。血管内脱水や高齢者、利尿薬併用に多い
  • CCB⇒末梢動脈拡張(末梢静脈の拡張が伴わない)による毛細血管透過性亢進、毛細血管内圧上昇⇒主に下腿に出やすい、足の甲やくるぶしが腫れたり、靴が履きにくくなる。まぶた手指に出ることも。アムロジピンなどのL型CCBに比べて、N型やT型チャネルもブロックするシルニジピンやアゼルニジピンは輸入細動脈だけでなく輸出細動脈も拡張するため浮腫が出にくいという説がある。
  • ACEi⇒頭頸部の血管浮腫をおこすことあり。血管透過性を亢進するブラジキニンの代謝減少?(ただしARBでも報告あり)。
  • ピオグリタゾン⇒腎尿細管のPPARγを刺激し、集合管Na再吸収亢進(インスリンと併用で浮腫発現率増 男性4%⇒14%、女性11.2%⇒28.9%)
  • インスリン⇒尿細管でのNa再吸収促進、血管透過性亢進
  • 女性ホルモン剤⇒凝固亢進によるDVT
  • 甘草含有漢方、グリチルリチン⇒アルドステロン様作用によりNa貯留
  • ステロイド⇒ミネラルコルチコイド作用による腎のNa再吸収亢進
  • 炭酸リチウム⇒アルドステロン作用によるNa貯留、まれに甲状腺機能低下
  • ドンペリドン、メトクロプラミドなど⇒プロラクチン分泌作用⇒Na再吸収亢進

 

  身体がむくむといってもさまざまな病態があります。薬剤が関与している場合もあるため、薬剤師としては各種薬剤によって引き起こされる病態についてもきちんと把握しておく必要があると思います。