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pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。

新規不眠症治療薬 スボレキサント(商品名ベルソムラ)

精神神経科

新しい作用機序の睡眠薬スボレキサントが発売開始となりました。

 従来のBZDはGABAに作用し、抑制系に働きかけて眠気を生じさせますが、ベルソムラはオレキシン受容体に拮抗し、覚醒系を抑えることで眠りを生じさせます。BZDよりも自然な眠りに近い睡眠が得られると期待されています。

 ※オレキシン:覚醒系の神経ペプチドで、多いと覚醒、少ないと覚醒を維持できなくなり眠くなる。ナルコレプシーオレキシン欠乏により起こる病気。

 

スボレキサントのDI

  • 用法用量:1日1回就寝直前 成人20mg、高齢者(65歳以上)15mg ともに錠剤に割線なし。発売時点では適宜増減が認められるか不明。
  • 食事との影響:食直後の服用は避ける。食後投与は空腹時投与に比べTmax1~1.5hrの遅延により入眠効果発現が遅れる可能性あり。遅延により眠気持ち越しの可能性も。
  • 効果:眠りにつくまでの時間を5分くらい早くして、睡眠時間を15分程度長くする。(第Ⅲ相臨床試験より)
  • 相互作用:CYP3A4を強く阻害する薬と併用禁忌。とくに風邪で頻用されているクラリスロマイシンも禁忌なので要注意。
  • 副作用:傾眠(4. 7%)、頭痛(3. 9%)、疲労(2. 4%)など。

 

その他、MRさん情報(H26.12時点)

  • 作用時間は6~7時間程度。
  • BZDとの併用は使用実績が少ないため推奨していないとのこと。
  • BZDから切り替える場合、BZDの反跳性不眠が懸念されるので、睡眠薬を服用していない新規の患者さんへの使用を勧めている。

 

次にFDAの見解を見てみます。

FDAの資料 http://www.fda.gov/downloads/.../UCM354215.pdf

 3ページに「Use the lowest dose effective for the patient」と太字で記載されているとおり、患者にとって効果的な最低用量を使用するように推奨。

 アメリカで承認された用量は5mg、10mg、15mg、20mgの4規格で、基本用量は10mg。細かい用量調節が可能となっています。高用量の30mg、40mgは申請却下となったようです。

 第Ⅲ相試験で、高用量では、夢遊症の報告、また自殺念慮が用量依存的に認められたという報告があります。10ページには日中傾眠は用量依存的に増加するというデータも記載されています。

55ページに安全性の懸念がまとめられています。

FDAはかなり慎重な姿勢をとっていることがわかります。

 

 新規作用機序の新薬が世界に先駆けて日本で発売されるという異例のケースですが、薬剤師としては適正使用を徹底する必要があります。

 不適切な使用により有害事象が発生し、使用に制限がかかってしまうのはあまりにも残念です。この新薬がばっちり体に合う患者さんもいると思います。

 変な表現ですが、このような新薬は「大切に育てていく」必要があると思っています。

 自分はいつも気づいたら眠っていたという毎日なので、眠れないという感覚がわからないのですが、この薬が少しでも多くの不眠症患者さんの助けになればと思います。