pharmacist's record

日々の業務の向上のため、薬や病気について学んだことを記録します。細心の注意を払っていますが、古い情報が混ざっていたり、記載内容に誤りがある、論文の批判的吟味が不十分であるといった至らない点があるかもしれません。提供する情報に関しましては、一切の責任を負うことができませんので、予めご了承ください。また、無断転載はご遠慮ください。

NNTが大事だと言うけれど…

製薬メーカーのパンフレットをみると、○○は心血管イベントを40%減少させる!みたいなことが書いてあります。

おおっ!と思いますよね。

で、そのカウンターとして、絶対リスクはどうなの?ていうのがある。
絶対リスクの減少は1%にも満たなかったりします(だからダメというわけではありません)。

絶対リスクの指標としてよく用いられるのが、NNTですね。
number needed to treatの略
治療必要数です。
NNT100なら、100人に治療すれば1名イベントを防げるということになります。

有害事象バージョンはNNHと呼びますね。HはHarmの略です。

よって、大事なのはNNT(とNNH)だ!
て、なるんですね。

ただ、これはちょっとどうなのかなって。
そもそもNNTってわかりにくくない?

NNTだけで判断することの何が微妙なのかっていうと、相対的なリスク減少の程度がNNTという数値からは見えてこないからです。

たとえば、
①1000人に投与して、10人にイベントが発生するところ、5人に減ったら、NNT200ですよね。

でも、
②1000人に投与して、5人にイベントが発生するところ、0人に減っても、NNT200です。

これって同じでしょうか?
絶対リスクを減らせる確率としては結局同じなので、患者さんが恩恵を得られる確率は同じなんですけど、自分が患者さん側の立場だったら、②の治療のほうがやる価値があるかなって思っちゃう(←こう思うのはおかしいのかな?自分だけ??)

てことで、NNTだとか相対リスクの数値ってよりは、
「100人(1000人でも10000人でもいい)に治療したら、○人イベントを起こすところ○人に減らせる」っていうのを記載するのが一番わかりやすいと思う。

まあ、そんなわけで、最近のブログ記事のRCTシートでは、なるべく解析人数とイベントを起こした人数(もしくは発生割合)の対比を書くようにしています(スコアがアウトカムの場合は平均スコアの変化を記載することになりますが)。
リスク比も一応書いてますけどね。信頼区間(or P値)を示して有意差があったかどうかも大事なので。


さて…、まじめぶったことを書きましたが、本日はまったくやる気がございません…。
楽しい出来事(みんなでJohn Digweed!!!!)のあとの、現実との直面ってえげつないものがありますよね。

はぁ…。やる気はいずこへ。

糖尿病患者に対するアスピリンの一次予防効果は?(NEJM2018)

Effects of Aspirin for Primary Prevention in Persons with Diabetes Mellitus. - PubMed - NCBI
N Engl J Med. 2018 Aug 26.PMID:30146931
f:id:ph_minimal:20180908010750j:plain
というわけで、ひとことで言うと、チャラになってしまうという結果。

有効性も安全性も有意差あり。
有害事象の増加が懸念されます。いちおう、NNTのほうが小さかったですが、微妙すぎる結果。
上記、リスク比は相対リスクなので、各患者さんごとの絶対リスクの程度次第でベネフィットがガッツリ上回ることになるのかもしれないけど、一次予防だと出血イベントで相殺されかねない感じ。

JPAD(PMID;18997198)も微妙な感じでしたよね、たしか。
あっちはPROBEでした。

アスピリンの一次予防の検討はもういいんでないかい?という感じが漂う今日この頃、という感じでしょうか。


もうちょっとちゃんと読み込んだほうが良さそうな気もしますが、
今日はずっとトムヨークの新曲を聴いてたので、批判的吟味は無しで研究の概要だけまとめて終了~。
詳細、気になるところではありますが、ブログではここまでとしておきます。


アブストだけ見て、フルテキストでどういうところに着目するかっていう訓練をしたいですよね。
RCTのチェックポイントはここだよ~っていうのはたぶんみんなチェックするんでしょう。各方面から方法論は提供されてますからね。
そういうのも大事ですが、その研究ならではのチェックポイントがあると思うんです。
それを見極められないと結局どうなんだろうって思ったり。
自分はそこが甘いなと自覚してます。背景知識がないとどこに着目すればいいかわからないんでしょうね。

この論文だったら…、とりあえず結果の詳細(Fig2とか)を見て…、そして、まずパッと思いつくのは○○がどうだったか…。
おっ、ディスカッションで述べられている~!
あら?そうなの? サプリメンタリを見てみると…、あららら。これって…。どうなんだろ。結果に影響しそうな気もするぞ…。でも価値がひっくりかえるほどのことではないかぁ…。うーむ。


さて、自分が気になったのはどこでしょうか?

かゆいところを引っかかないまま終わるというなんとも憎たらしい展開。
たまにはそういうときがあってもいいですよね。

まあ、人それぞれ、ここが気になる!ていうポイントがあるでしょう。
別にどれが正解とかないんでしょうけど、抄読会ではみんなが気になるところをぶつけあえるからいいんですよね。そして、その場に鋭い指摘をするパイセンがいれば、初学者も論文を読むチカラが身についていくんだと思います。

で、自分はというと、リアルでは抄読会などほとんどやったことがないため(※)、永遠の素人としてほふく前進のようにゆっくりとカメのように歩み進んでいこうと思います。

※オンラインでのJJ CLIPだけかも!?ありがたや…


いちおう、プロトコル論文をはっておきますね。
ASCEND: A Study of Cardiovascular Events iN Diabetes: Characteristics of a randomized trial of aspirin and of omega-3 fatty acid supplementation in... - PubMed - NCBI
Am Heart J. 2018 Apr;198:135-144. PMID:29653635
アスピリンだけじゃなく、omega-3も一緒に並行してやってたみたいですね~。

音楽の話をしよう 本年度、大本命 Thom Yorke “Suspirium”

音楽の話をしている場合ではないってのは重々承知しているのですが、これはスルーできません。

ホラー映画『Suspiria』のリメイク版のサントラなんですが、これがトムヨークThom Yorkeの新作となるようです。
解禁された新曲“Suspirium”がすばらしすぎる。

youtu.be

一時はエレクトロニカに傾倒し、その後はダブステ(dubstep)の影響を受けていたように思いますが、ここにきてこんな美しい曲を!

はぁ~~…ため息しかでない。
こりゃあ、勉強している場合じゃないし、論文読んでいる場合じゃないし、働いている場合じゃない。
ただただ聴くのみ!

そして、この映像すばらしくないですか?
こういうのめっちゃ好き!
映像の世界はまったくわかりませんが、小難しいことしなくてもすごいものはすごいんですよ。
これはこれでミニマルって感じ。
完璧なMVですね。

いやぁ~、やられました。トムヨーク、一生ついていきます!て感じ。

来年はフジロックかな?
そうなると有休有休!!!
てか有給休暇が無理なら有償休暇でもいいので休みたい!
("有償"の意味、これであってる?言葉選び間違ってるかもですが、お金を会社に払ってでも休みたいということですッッ)